片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告) 活動レポート

「川崎市にも給付制(返済不要)の大学奨学金制度を」と質問→「検討します」と一歩前進

2015年12月18日

議場写真tきょう12月18日の市議会本会議で「給付制奨学金の創設を」と質問し、「見直しも含めて検討してまいりたい」と、一歩前進の答弁がありました。
「現在10人の無利子貸付の枠の拡大」なども含めて、質問の全文を紹介します。

他の地域要求を取り上げた質問内容は、明日以降紹介してまいります。

 

大学奨学金・無利子貸付枠を「10名」ではなく増やすべき

大学奨学金制度について教育長に伺います。

新たな総合計画の実施計画素案では「大学奨学金の制度見直しに向けた検討」という内容が盛り込まれています。憲法26条に示された「等しく教育を受ける権利」を保障し、貧困の連鎖を防ぐためにも、本市の大学奨学金は拡充すべきであり、この検討する機会に思い切った拡充を検討するべきです。その立場から、以下質問してまいります。

本市の大学奨学金は無利子による貸付を行っているものですが、募集枠は「10名程度」となっています。東京都大田区では、本市と同様の無利子の奨学金貸付制度を255名の枠で実施しています。本市も、現在のまま無利子貸付を守った制度とした上で「10名程度」という募集枠を増やすべきです。見解を伺います。

答弁

・大学奨学金は毎年10名程度を認定、直近5年度の申請者は平均26名
・申請者の中には、既に他の奨学金で認定されている方もおり、卒業後の返済額が高額になり将来的な負担が懸念されることから、不採用としている場合もある
・本市の大学奨学金は、無利子での貸付制度であり、学生にとって有意義なものと認識しているが、募集枠は今後の申請状況等を見極めて判断したい

無利子貸付制度の周知徹底を

大学奨学金の申請数は年間平均26名とのことで、現在10名の募集枠については「今後の申請状況を見極めて判断する」との答弁でした。
現在の申請者数が少ない理由には、周知が不足していること、また厳しい経済状況の下で「月3万8千円だけではやりくりできない」という判断を、学生や家族がしていることなどが考えられます。
大学奨学金制度の周知はどのように行っているのか伺います。また無利子貸付であることなど、この制度の有用性を知らせるようなリーフなどを作成して活用すべきと思いますが、あわせて伺います。

答弁

・毎年3月上旬に首都圏中心に大学135校へ、申請書類と要項・ポスターを送っている
・市内の(私立・県立含め)高校、区役所・支所、図書館・市民館等にも配布している
・市政だより・HPでも広報している

貸付額の増額を

先ほどの答弁では、「他の奨学金で認定されている学生」などについては「返済額が大きくなるため、不採用とする場合もある」とのことでした。
しかし、学生の実態から見れば、貸付額の増額などの対応が求められると考えます。
本市の大学奨学金は年額45万6千円を無利子で貸し付ける制度ですが、いまの学費は、年額国立大学53万円、私立大学80万円以上、その上さらに国立大学では今後40万円にのぼろうという値上げが計画されています。それに加え家賃・教材費・通信費・水光熱費など含めれば年間300万円ほどが必要です。
45万6千円という現在の本市の奨学金の額で生活していこうと思えば、バイト漬けの生活にならざるを得ず、学びに充分に取り組めないという実態があります。

神奈川県内の私立大学経営学部2年のKさんは、「学費が安いから」という理由でいまの大学を選びました。
Kさんは学生支援機構の無利子貸付の奨学金を毎月6万4千円・4年間受けて大学に通っています。Kさんの実家は母子家庭で、Kさんと専門学校に通う弟さん二人の学費をお母さん一人で支えています。仕送りは一切なしで奨学金を借りる、という前提で進学したそうです。
Kさんは、大学進学で地方から出てきた後「急いでバイトを決めなければ」と思い、居酒屋でアルバイトを始めたそうです。休みも取れず週3日~5日、18時か20時に勤務を始め、深夜2時の閉店までの勤務が当たり前だったそうです。当然バイト後に大学の課題を終えてから寝ると、朝の1限の授業には間にあわないことが多く、結局1年次には単位を4つ落としてしまった、とのことでした。

こうした厳しい経済状況の下で学習条件を改善するためには、奨学金の拡充が必要です。もちろん返済の負担が大きくなりすぎないように配慮すること、この後で述べますが返済の際の猶予制度などについても検討しなければなりませんが、今回の検討の際に、奨学金の貸付額の増額や、学生支援機構など他の奨学金との併用についても柔軟な対応を検討することが必要と思います。見解を伺います。

答弁

・個別に状況を判断したうえで、他の奨学金との併用も認めている
・貸付額は、将来の負担を考えると妥当と考える

「経済的な困窮」などの場合でも「猶予・免除」を

他の奨学金との併用は認めているとの答弁でした。

学生が卒業した後の奨学金の返済の負担も深刻です。奨学金の多くは有利子で、卒業時には平均で300万円、多い場合には1000万円もの借金を背負って社会人生活をはじめることになります。
本市の奨学金の返済は、半年毎に約9万円か、1年ごとに約18万円かのどちらかを選んで返済するという制度になっていますが、大学卒業後に非正規の仕事についた場合など、返済が困難・不能になってしまいます。

私は昨年、市内の20代の男性から「奨学金の返済が大変で生活できないので減免などはどう手続きしたらいいのか」との相談を受けました。
雇用の非正規化が広がる中で、払いたくても奨学金の返済ができなくなる実態にたいして、対策を打つ必要があります。

本市の奨学金の償還免除・猶予の要件は「災害・疾病その他の理由により償還が困難な場合」とされていますが、これに加え「経済的な困窮」と言った文言も明記して、救済を図るよう検討すべきと考えますが、見解を伺います。
また以前の育英会奨学金には、教職についた際には返済不要とするような制度がありましたが、たとえば卒業後も川崎市に居住するか、本市の企業に就職すれば何らかのインセンティブがある、といった制度にすることも、今後検討するべきではないでしょうか、伺います。

答弁

・失業などの場合には、本人の申し出にもとづき償還の猶予を認めている
・奨学金の目的についてはこれまでどおりとしたい

返済不要の「給付制奨学金」の創設を

失業などの場合には猶予措置を取ることができるとの答弁でしたので、丁寧に周知をしていただきますようお願いいたします。

今年の10月26日、財務省が「財政制度等審議会・財政制度分科会」に提案した財政方針によると、「今後15年間で国からの支出を大幅に削減し、一方で国立大学の“自己収入”は増やすように求める」という計画となっています。仮に、この計画どおりに国立大学が授業料値上げだけで穴埋めした場合、15年後には国立大学の授業料は現在の約53万円から93万円程度に、40万円もの値上げになります。そうなれば私立(わたくしりつ)大学にも値上げが波及するのは疑いありません。

大学の学費が大幅に値上げされれば、経済的に厳しい家庭のお子さんが大学に進学する道、貧困の連鎖から抜け出す道が失われるという事態となってしまいます。
文部科学省の調査によると大学の中退の最大の理由は、「経済的な困難」です。奨学金を借りる学生は1990年代までの2割程度から、現在は53%へと急増しています。

先ほど紹介したKさんが、やりくりに苦労して家賃の支払いにも困っていたある日、「困ったときのため」の、母親と共通の銀行口座の残高を見たら2千円しかなくて愕然としたそうです。
月6万4千円の奨学金から、家賃、水光熱費を払うとほとんど何も残りません。奨学金が振り込まれる数日前は本当に大変で、Kさんは2日間絶食してなんとかしのいだそうです。教科書など大学で必要な書籍も買えず、授業開講後も5週たってからようやく揃えることができたそうです。このKさんは「安心して学べるよう給付制の奨学金をつくってほしい」と言われています。

返済不要の給付制の奨学金は、母子家庭はじめ低所得な世帯などの多くの方が高等教育を受けて、貧困から抜け出すためにも欠かせない重要な制度だと考えます。先ほど紹介した東京都大田区のほか、東京都小金井市・千葉県旭市のように返済不要の大学生向けの返済不要の給付奨学金制度を独自に実施している自治体があります。
大田区は無利子貸付を255人枠で行っているだけでなく、返済不要の大学奨学金給付制度も40名の枠で行っています。今回の検討の機に、給付制奨学金の創設を検討すべきと考えますが、見解を伺います。

答弁

・高校についてはすでに給付型奨学金を実施している
・大学奨学金については、他都市の奨学金、国や県の経済的支援策の状況を見据え、見直しも含めて検討したい

「6年間で4千万円」の医学生向けの奨学金創設の検討を

他都市の奨学金、国や県の経済的支援策の状況を見据えて、見直し含めて検討するとのことでした。切実な実態を受け止めて、前向きに検討していただくようお願いします。

最後に、医学生向けの奨学金について健康福祉局長に伺います。
他の学部と比べ特別に深刻なのが医学部の高学費の実態です。比較的安価な国公立大学に進学するためには非常に高い学力が求められます。結果として、国公立大学の医学部には、進学塾に早くから通うことができ、専門の予備校などに通うことのできる所得の高い世帯の学生の占める割合がかなり高くなっているという実態があります。
一方で私立大学医学部は、県内のA大学では初年度で710万円、B大学では約650万円という学費の負担を求められるわけですから、所得の低い世帯から医学部に進学するのは夢のまた夢、というのが実状です。

本市は産科などの医師が不足している厳しい状態にあるのですから、医師の確保策としても、神奈川県や相模原市が行っている「地域医療医師修学資金」のような、医学生を対象とする奨学金の検討をすべきではないでしょうか、伺います。

答弁

・医師の確保策としては、課題があるものと考える

子どもが「将来の夢」をもてるよう、給付制創設など奨学金の充実を

医師の確保策としては課題があるとの答弁でしたが、6年間で4千万円にも上る学費は医師を志す学生・生徒のカベとなっているのですから、学ぶ権利の保障、職業選択の保障の観点から検討していただくよう要望いたします。

世界では大学含む高等教育も無償が当たり前です。OECD諸国で、数十万円の学費負担を家庭に求めた上、給付制奨学金も行っていない国は日本しかありません。川崎市議会としても2013年3月に「給付型奨学金制度の創設を求める意見書」を国に提出しています。

首都大学東京の阿部彩教授は「貧困状態に置かれた子どもたちは、自己肯定感をなくしていく」と述べています。中学2年生に「将来の夢があるか?」という質問をしたところ、非貧困層の31%に対し、年収200万円未満の貧困層の子どもでは44%が「夢がない」と答え、その理由は「どうせ叶わないから」が多かった、と調査結果を報告されています。

本来的には国が果たすべきと思いますが、所得の低い家庭の学生・生徒をはじめ、すべての学生・生徒に学ぶ機会を保障し、貧困から抜け出す道を指し示すこと、将来の夢を持てるようにすることは、自治体の重要な役割ではないでしょうか。給付制奨学金の創設含めた大学奨学金の充実を求めて、質問を終わります。

片柳すすむ

ブログ新着記事

  • ブログ過去の記事

リンク

PAGE TOP