今日は千葉県市原市にコンビナート災害問題での視察に伺いました。
羽田新飛行ルートで、南風時に羽田空港から川崎臨海部石油コンビナートの上に向かって離陸する運用がされるようになりました。1970年から2020年までは「重大事故の危険がある」ということで、コンビナート上空の飛行は禁止の通知が出されていましたが、川崎市が解除を承諾してしまいました。
墜落事故はもとより、航空機からの落下物がコンビナートのタンクや配管を損傷させれば重大な事故が起こることになります。重大なコンビナート事故の危険が大幅に増大しました。
市原市では2011年にコスモ石油のタンクが連続爆発する重大な火災事故が起きています。この事故の詳細を聞き、コンビナート災害対策に活かそうというのが今回の視察の狙いです。
とり急ぎ、自分が問題意識を持っていた「2次避難」と、今回の視察で知った「泡放射器」について報告します。
市原市のコスモ石油ガスタンク火災
2011年3月11日当時のリアルな対応状況を話して頂きました。
とにかく消防隊から被害者を出さなかったとのこと。本当に良かったです。
ガスタンクは5回連続爆発(途中にカウントしきれない小規模爆発も)しています。
想定外の爆発で避難所の小学校から「2次避難」
タンクの周辺での火災が分かり、市原市はすぐにコンビナート災害として対応を開始。住民に避難勧告が出されたので消防団の皆さんは地域に周知に出て、住民の一部が避難所の若葉小学校に避難。しかし17時35分に市原市災害対策本部は、爆発に伴う飛散物でガラス窓の破損等が発生したため、避難者の安全確保ができないと判断。予定になかった2次避難(内陸部の国分寺台西小学校に176人、国分寺台西中学校に225人、国分寺台東小学校に150人)を行ったとのことです。
これを川崎市に当てはめるとどうなるでしょうか。
【市原】コスモ石油千葉製油所→若葉台小学校の距離は約2.5kmです。
【川崎】エネオス千鳥町工場→桜本中学校の距離も約2.5kmです。
他にも市原市の若葉小学校と同等かそれ以上に近い距離にある「避難所」は少なくありません。万一の事態が起きれば同様の事態が起こりかねません。
川崎市は、この市原市のコスモ石油の火災の後に『臨海部防災対策計画』を改訂していますが、それでも桜本中学校その他の臨海部工業地域周辺の避難所は、市原市と同様のBLEVEが起きた場合には「屋内避難」とされているだけであり、タンクの連続爆発などが起きるような事態の中でも、自主防災組織(町内会など)が災害時要救助者(高齢者や障がい者など)の避難を援助することとされています。
本当にそんな避難ができるのでしょうか。
また、市原市ではガスタンクの爆発により飛散物した板金が6200m、5500m離れた場所まで到達していたとのことです。飛散物によるガラスの破損も4100m地点にまで及んでいます。
コスモ石油が補償したものはこれ以外にもあるため、被害の実態はもっと大きい可能性もあるとのことでした。
6.2kmという距離を川崎市に当てはめると、川崎区千鳥町のエネオス工場から幸区の御幸小学校付近にまで鉄板が飛んでくる、ということになります。
大容量泡放射システムを機能させることができるか
今回の視察で詳しく知ったのが、「大容量泡放射システム」です。毎分3万リットルの泡を130mの距離まで放射できるシステムです。要請から設定まで8時間かかるものの、設定できれば大きな力を発揮できるとのことです。
しかし、10tトラック10台分の機材を置かなければならず爆発の危険があり近寄ることができなかったことなどからこのシステムは設定できなかったとのことでした。
川崎市でコンビナート災害があった場合にこのシステムが活用できるのか、これも不安です。
コンビナート上空への離陸は辞めるしかない
コスモ石油のコンビナート火災は鎮火するまで11日間=234時間23分がかかったとのことです。高圧ガスが残った状況ではそのガスを燃やし尽くさなければかえって爆発の危険があるので、燃やすしか方法がないということです。
また高圧ガスタンクと同等かそれ以上に危険な物質もあるのがコンビナートです。災害が起こる可能性を高めるような羽田新飛行ルートを設定すること自体、あまりにも危険すぎる愚行だということが、改めて実感できました。
「海から入って海に出る」。このルートしかないです。
市原市の皆さん、ありがとうございました。