片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

川崎市教育委員に警察OBを任命提案-「子どもの成長発達を支える」立場の教育委員こそ必要では?

2020年3月19日

3月19日の市議会本会議で、川崎市教育委員会委員の任命議案が提案、審議されました。

PTA出身のO委員の後任に、川崎市長が提案したのは、一貫して神奈川県警で勤務してきたI氏でした。この方は2006年からはブラジル・サンパウロ州軍警察に派遣され、2012年からは県警生活安全部少年育成課長を経験するなど、一貫して「治安維持」の立場で国際経験・少年対応の経験を積んできた方です。

教育委員会委員に求められるのは、教育的な立場から児童の発達や成長を支える教育行政の運営や意思決定をすることで、警察の任務である「治安維持」とは本質的に異なります。またPTAの立場で教育委員会に参加していたO委員の後任には、地域で教育に参加してきた教職員出身者や保護者などの方がふさわしいのではないでしょうか。

そういった観点から、代表質疑を行いました。

質問と答弁メモを掲載しますのでご覧ください。

(正式な議事録は後日議会から発表されます)

初回の質問(日本共産党)

議案第63号 川崎市教育委員会委員の任命についてです。この議案は、教育委員会委員の任命にあたり議会の同意を求めるものです。

■教育委員に求められる「こどもの成長発達保障」の観点と、警察官の任務の「治安維持」とは本質的に異なる

今回提案されている石井孝氏は、直近ではJICA(ジャイカ)・国際協力機構の技術顧問を務めておられますが、元々は神奈川県警に入職して以来、一貫して警察畑で勤務されてきた方です。2012年9月からは県警生活安全部少年育成課長を務め、また2006年9月からは県警の業務の一環としてブラジル・サンパウロ州軍警察に派遣された経歴も持っています。

今回の提案理由は、川崎市で外国籍の児童生徒・外国にかかわる児童生徒が増加しているもとで、国際協力の経験を持ち少年事件にも対応できるから、とのことです。しかし、国際理解にかかわる経験や少年事件の対応の経験があったとしても、それらの活動はあくまで警察の業務の一環として行ってきたものであり、その目的は教育ではなく治安維持におかれているものです。

教育委員に求められるのは教育的な立場から児童の発達や成長、学術・文化にかかわる教育行政の運営や意思決定を行うことであり、警察官の任務である治安の維持とは本質的に異なるものと考えます。

そこで、本質的には治安の維持を目的とする警察の出身者を教育委員会委員として任命した例が、過去に本市であるのか、伺います。また、政令市で同様の例があるのか、伺います。

■教育の自主性・自立性を保つためにも教育委員には保護者代表などの選任を

そもそも自治体の行政が、市長が所掌する一般行政と教育委員会が所掌する教育行政に分けられているのは、教育の自主性・自立性を確保し、国民の学習権・教育を受ける権利を保障するためです。また教育委員会が子ども・若者の育ちと学びを支える行政機関として適切に機能していくために、教育や行政の専門家だけでなく保護者など地域住民が教育委員会委員となり、専門的な行政官による事務局を指揮監督する制度とされています。

今回退任される小原委員はまさにPTA・保護者の立場で教育に関わってきた方であり、この制度の考え方からすれば、その退任後も同様に地域で教育に関わってきた方を選任するのが当然だと考えますが、そうではなく警察行政の立場にいた方を任命提案した理由について、市長に伺います。

■「多文化共生」などの経験を蓄積した教育現場の経験者こそ

現在の教育委員会委員には、教育長を除いては川崎市の教育現場を教職員として経験された方は一人も入っていません。長らく川崎市立学校の現場では多くの外国人児童生徒が教育を受けており、全国的に見ても先駆的に多文化共生の教育実践が行われています。そして教育現場にその経験も蓄積されてきています。こうした現場の経験を持つ有能な教職員経験者が市内には多数おられると思いますが、なぜこれらの有能な方々から教育委員会委員を任命するのではなく、外部から任命しようとするのか、市長に伺います。

市長の答弁

教育委員会委員の任命についての御質問でございますが、提案する石井氏におかれましては、神奈川県警察の在職中に、少年育成課長、幸警察署長などを歴任し、また、在バルセロナ日本国総領事館領事やブラジル連邦共和国サンパウロ州軍警察への派遣など、国際経験も豊富であり、現在も、独立行政法人国際協力機構において安全対策技術顧問として、国際貢献に尽力されております。

このような経験と知見に鑑み、昨今のグローバル社会の進展に伴う教育現場での児童生徒の多様化への対応と国際理解教育のさらなる充実、また、安全安心な教育環境の整備に向けた地域における児童生徒の防犯対策に関し、的確な指導・助言をいただけるものと考えております。

次に、教育委員会につきましては、現在、本市の教職員経験者である教育長と大学教授2名、自営業1名、保護者委員1名、民間企業社員1名の教育委員5名で構成され、それぞれの専門分野と保護者の視点から、様々な教育課題に対する御意見をいただいており、今回の任命に当たりましても、他の教育委員との専門性におけるバランス等も考慮したものでございます。

教育次長の答弁

本市及び各都市における任命状況についての御質問でございますが、はじめに、本市におきましては、これまで、警察に所属された経歴を有する方を教育委員として任命したことはございません。

次に、各都市の状況でございますが、各政令指定都市及び都道府県の教育委員会事務局に対して、聞き取りを行った範囲におきましては、政令指定都市では確認されませんでしたが、都道府県では、群馬県、埼玉県及び千葉県において、現職も含め、任命している事例があることを確認したところでございます。

再質問(共産党) 

これまで本市で警察出身者を教育委員に任命したことはなく、政令指定都市でも例はないとのことでした。本市含め政令市で初となる警察出身の石井氏を提案した理由について、児童生徒の多様化への対応と国際理解教育、児童生徒の防犯対策などがあげられました。

しかし、これまで指摘してきたように石井氏は治安維持を専門業務とする警察官として経歴を積み上げてきた方であり、国際貢献や少年との対応の経験があるとしても、その目的はあくまで治安維持に置かれているものです。教育現場における児童生徒の多様化への対応や国際理解教育をすすめるために求められる経験や知見とは本質的に異なると考えますが、市長に伺います。

また、グローバル社会や児童生徒の多様化に対応する、というなら治安維持の専門家ではなく、国際理解教育や多文化共生にかかわる知見を持つ専門家こそ任命すべきと思いますが、市長に伺います。

石井氏の経験と知見から「児童生徒の防犯対策に指導・助言を頂ける」とのことでしたが、この「児童生徒の防犯対策」とは、児童生徒が犯罪を起こすことを前提とした対策という意味なのか、市長に伺います。

市長の答弁

教育委員会委員の任命についての御質問でございますが、石井氏におかれましては、在ニカラグア日本国大使館書記官、在バルセロナ日本国総領事館領事、ジャイカプロジェクトに基づくブラジル連邦共和国サンパウロ州への派遣など、国際経験が豊かであり、また、子どもを犯罪から守る地域の安全対策にも長く関わってこられました。

このような経験と知見から、的確な指導・助言をいただけるものと判断したものでございます。

意見(共産党) 教育委員の任命にあたり子どもの教育を受ける権利保障を第一に

意見を申し上げます。

石井氏がサンパウロ州軍警察に勤務してきたことなど国際経験が豊かだという理由で「グローバル化に伴う教育現場での児童生徒の多様化や国際理解に対応できる」との答弁を繰り返されました。教育委員として求められるのは教育的な立場で子供と向き合うことですが、警察官としての職務経験がどう生かされるのか、という点については最後まで答弁がありませんでした。

「国際経験が豊かである」と言うなら、本市が長年積み上げてきた国際理解や多文化共生にかかわる教育の実践に現場で関わってきた方の中にも、豊かな国際経験を持つ方もおられるのではないでしょうか。そうした方こそ任命すべきです。

また「児童生徒の防犯対策」については、子どもが犯罪を起こすことを前提とした対策ではなく「子どもを犯罪から守る地域の安全対策」だ、との答弁でした。子どもを犯罪から守る地域の安全対策ということなら、なによりPTAのみなさんが最も願い、実践してきたことです。今回の任命提案は、保護者の立場で参加してきた小原委員の後任となるわけですから、同様の保護者の立場から委員を任命するのが適当だったのではないでしょうか。

教育委員の任命については、子どもの権利条例を全国に先駆けて制定した本市としては、何より子どもの教育を受ける権利を保障することを第一におき、教育委員会が教育の自主性・自立性を発揮できるような構成とするべきです。今後もそうした方針を貫くよう要望いたします。

これらの理由から本議案には同意できないことを申し述べて、質問を終わります。

片柳すすむ

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