片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

『差別のない人権尊重のまちづくり条例』- 日本共産党が議論した立場 ≪前編 「人権全般」部分≫

2019年12月17日

『川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例』(以下、人権条例)について、どういう立場で日本共産党が議論したのか、について書きたいと思います。

人権条例の条文はこちら(http://city.kawasaki.jp/980/page/0000112486.html →議案157号)です。

立脚点は「ヘイトスピーチ被害の現実」

大前提は「ヘイトスピーチは許さない」「被害の現実に立脚する」ことです。

川崎でヘイトスピーチが行われるようになり、私たち日本共産党も5年前から街頭で反対の声をあげ続けました。富士見公園でも、中原平和公園でも、川崎駅前でも、ヘイトスピーチやそれに類する言動を行う人たちの前で、また、周辺を行きかう不安げな市民の皆さんに「ヘイトスピーチは許さない」と声を上げ続けました。

議会でもガイドラインの「迷惑要件」削除をはじめ、対策を求めてきました。ここに立脚点があります。

だからと言って、それだけで「罰則付きの条例をつくるべき」と判断することはできない問題がいくつかありました。「障害者やLGBTなどの皆さんの願いからみて、この条例は成立させて良いものか」「日本国憲法の諸原則にてらして十分なものになっているか、間違っても『憲法違反』と言われるようなものではないか」ということが、その主な点です。

先に結論的に言うと、下の画像のような点で前進をつくることができました。

人権条例 党の論戦

今日はその後者、条例2章の「人権全般部分」を中心に報告したいと思います。

本邦外出身者への差別的言動は「禁止」、障害者などは「取扱いの禁止」

市の条例の説明資料では『障害者差別解消法』『ヘイトスピーチ解消法』などを条例制定の「背景」としてあげています。
そして大きくは、2章の「人権全般部分(人種、国籍、障害、性別、性自認などを理由とした差別的取扱いの禁止)」、3章の「ヘイトスピーチ対策部分」で構成されています。

3章の「ヘイトスピーチ規制部分」では、『本邦外出身者に対する差別的言動』を禁止しています。

それに対して2章の「人権全般部分」は、3月の「骨子案」段階では『差別の禁止』とされていたのが、6月の「素案」では『不当な差別的取り扱いの禁止』と変更されました。

市の説明では、2章の人権全般部分まで「差別の禁止」と規定すると『差別的言動まで禁止する』ことを含むことになるため、差別的取扱い(例えば、障害があることなどを理由として賃金を不当に安くするなど)のみを禁止する規定とした、とのことでした。

新潟市の障害者差別解消条例は「差別の禁止」を規定

しかし、川崎市人権条例の制定の「背景」とされる障害者差別解消法では、①「不当な差別的取り扱い」、②「合理的配慮(例:講演会などで聴覚障害のある人を手話通訳者の前の席に案内すること)の不提供」の両方を『禁止』しています。それを自治体が条例化することで具体化される仕組みです。

実際に、新潟市の障害者差別禁止条例は、合理的配慮を欠くことを含めた「差別の禁止」を規定しています。

こうしたことから川崎市が今回の「人権条例」をつくる際にも「合理的配慮を欠くこと」の禁止を明記し具体化することが求められていましたが、「差別的取り扱いの禁止」にとどまりました。

LGBTの方々への差別についても同様で、東京・国立市では「アウティング(同意なく性自認や性的指向を暴露すること)禁止」を明記した条例を策定。川崎市でも「アウティング禁止」の規定が待たれていましたが、川崎市では「差別的取り扱いの禁止」にとどまりました。

ちなみに『男女平等かわさき条例』では、「男女平等にかかわる人権侵害の禁止」規定があり、その中で「性別による差別的取り扱い」に加え「性的な言動により相手の生活の環境を害する行為」も禁止しています(仮に人権条例が「上位条例」とされたとすれば、こういった先進的な規定が不十分な規定により「上書き」されてしまう恐れがありました)。

障害者などの「差別禁止」規定は、「表現の自由」と矛盾しない

話は少し戻ります。

■市の説明は


差別的『言動』を禁止することは憲法の「表現の自由」との関係で最小限に限られなければならない。そのため、ヘイトスピーチの事実があり「解消法」をつくる立法事実となった川崎市だからこそ、「本邦外出身者への不当な差別的言動」に限り禁止することにした。


というものでした。

日本共産党も「憲法の全条項を守る(日本共産党綱領)」立場から、上記の市の考え方は理解します。

しかし、新潟市のように「障害者差別の禁止」規定をおいている条例もあります。

日本国憲法は14条で「人種、性別…により差別されない」とし、21条で「表現の自由は保障する」と、両方を規定しています。「差別の禁止」規定をおくことと「表現の自由」を保障することは矛盾するものではありません。

「合理的配慮を欠くことの禁止」「個別条例の制定が可能か」について確認

これらのことから日本共産党は障害者やLGBTの皆さんの願いに立ち、以下の2点を質問・確認しました。

①人権条例で「合理的配慮を欠くこと」と「アウティング」の禁止を規定すること。できないなら、5条の「不当な差別的取り扱い」に含んで禁止すると解釈し、対策を具体化すること。

②人権条例を策定したとしても「障害者差別禁止条例」などの個別条例を作ることは妨げられないのか?

その結果、答弁で「(合理的配慮を欠くことも)不当な差別的取り扱いに含みうる」「(人権条例の制定は)個別条例の制定を妨げない」ことを確認しました。

なぜこの質問をしたのか。

3月の「骨子案」の時点で市は「人権条例は子どもの権利条例、男女平等かわさき条例など各分野の条例に対する『上位条例』となる」との考え方を示していたからです(後に否定し『横並び』の位置づけだと答弁)。

以上述べてきたように、

①「合理的配慮を欠くことも『不当な差別的取り扱い』に含まれうる」

②「人権条例の制定は、個別条例の制定を妨げない」

ことが確認できたので、2章部分で共産党がこの条例案に賛成できる条件ができました

きょうはここまでにして、他の内容については明日以降余力があるときに書きたいと思います。

片柳すすむ

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