片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告) 活動レポート

「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」案―委員会での採決は9日(月)に延期

2019年12月6日

10時から16時過ぎまで、文教委員会で「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」案をはじめとする議案の審査が行われました。
前回に続き、答弁についてはまだ書けませんので、質問した項目のみ(現場で削ったり追加したものなどもあるので正確ではありませんが)を報告します。
結果から言うと、委員会採決は今日予定されていましたが、自民党により「付帯決議案」が提案されたため、9日(月)の文教委員会での採決に延期されました。

冒頭に

私たち日本共産党市議団は、ヘイトスピーチに遭われた皆さんの被害の重さを出発点にして、同時に憲法に示された原則をふまえて、多くの法律家・専門家にもご意見を伺いながらこの条例案について議論してきました。その中で、素案段階よりもいくつかの点で明確化などが図られました。きょうもヘイトスピーチとその被害の実態と憲法原則の観点から質疑をしたいと思います。

片柳の質疑

① まず4条では、「市民・事業者の責務」として「市の差別解消の施策、人権施策に協力するよう努めなければならない」とされています。その上で12条では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動を行い、行わせてはならない」としています。ということは、不当な差別的言動が目の前で行われているのに、それを市民や事業者が見過ごしてしまった場合も、12条で言う「行わせた」ということに含まれる、と読むこともできますが、そのようなことはないのか。念のために伺います。

② 12条はこれまでの質疑での繰り返し指摘してきた「刑罰の構成要件」に当たる部分ですので、解釈を明確にするために質問させていただきました。本来ならばここの条文は法律の条文によくある「不当な差別的言動を行い、または人をして行わしめてはならない」などとすべきだったということを指摘しておきます。

③ 次に13条・14条の不当な差別的言動の「対象」の問題です。パブコメへの回答214番・217番では、(不当な差別的言動を受けた)対象が依然と異なる場合は別の違反行為、対象が同じ場合は同じ違反行為とする、とされています。これも同一の行為が繰り返されることが刑罰の要件となるため、重要なポイントですが、対象が「異なる」「同じ」とはどのような線引きとなっているのか、対象には「特定の個人」だけでなく、抽象的な「朝鮮人」などと言った場合も含むのか、伺います。

≪④これは質問しなかったのでカットします≫

⑤ 13条・14条で、勧告・命令は「地域を定めて」行うとされていますが、この「地域」はどのように定めるのか伺います。

⑥ 横浜地裁川崎支部の仮処分のように、「当該社会福祉法人の事務所入口から半径500m」というような定め方を想定しているのか、伺います。

⑦ 勧告・命令についてですが、「同一理由差別的言動」の「明らかなおそれ」があると認めるに足る「十分な理由」があるときに、勧告・命令ができるとされていますが、「明らかな恐れ」「十分な理由」とは、どの程度の蓋然性があることが求められているのか、伺います。

⑧ 「インターネットでの告知」などをイメージしているということだと思いますが、このような規定を設ければ、「無告知の街頭宣伝」などが増えることが予想されます。そうなると指摘してきた「緊急でやむを得ない場合は審査会を開かない」という「例外規定の常態化」が起きるのではないかと危惧します。

たとえば「明らかなおそれ」「十分な理由」を知ってから1日、2日しか期間がないとしても「審査会」を開くよう最大限の努力をすべきと思いますが、伺います。

⑨ 審査会の委員は「5人」と定められていますが、その定足数はどうなるのか、3人出席すれば成立するのか、伺います。

⑩ 「緊急の場合」で審査会が開かれなかった場合、事後にでも速やかに審査会を開き、勧告・命令をしたことを報告すべきと思いますが、伺います。

⑪ その場合に勧告・命令が無効となることもありうると思いますが、どうでしょうか。

⑫ 13条・14条の勧告・命令の前提に、まず1回目に「不当な差別的言動を行い、行わせた」という事実を市が認定することが前提となると思います。条文の中に明文規定はないのですが、市が1回目の差別的言動を「認定」して、まず審査会の意見を聴くという手順があると思いますが、伺います。

⑬ この1回目の認定が極めて重要で、それと同一の差別的言動が繰り返されることが「構成要件」となっているのですから、条例に基づく施行規則などに明記されるべきと思いますが伺います。

⑭ 次に、この「認定」の効力がいつまで続くのか、ということについて伺います。

この「認定」と同一の差別的言動が行われるおそれなどがある場合、具体的にはインターネットなどでの予告があった場合などに「勧告」が出されるということです。これまでの委員会などでの説明で、「緊急を要する場合」の説明として、一度「勧告」をしてその期限である6か月の期限が切れた直後、6カ月と1日後に行われる場合などを想定している、という答弁がありました。

そうなると、勧告の期限は切れているが初回の「認定」は効力を持ち続けるということになるのではないでしょうか。「同一理由差別的言動」の起点となる初回の「認定」の期間はいつまでなのか伺います。

⑮ 差別的言動は絶対に許されないことですが、言論の自由の観点から初回の認定が永遠に効力を持ち続ける、ということでいいのか問われるのではないでしょうか。東京弁護士会のモデル条例も期限を「10年」としていた(改めて読んだところ、東京弁護士会のモデル条例では「命令」の効力を定めたものでした)と思いますが、伺います。

⑯ 「審査会」の開催頻度はどうなるのか

⑰ 差別的言動を行う者たちによる「告知せずに街頭宣伝を行うこと」が常態化した場合には「審査会」の開き方も変えていくべきと思うが伺います。

採決にあたっての態度の表明

自民党から「この条例案は3月議会で継続して審議するべきではないか」との提案があったことから、共産党としての条例案への考え方について述べました。

冒頭に述べた通り、日本共産党としてヘイトスピーチ根絶の立場で取り組む中で、ヘイトスピーチとその被害の重さを出発点にしながら、憲法原則の徹底をはかるよう求めてきました。

また、障害者やSOGI(LGBT)、性別その他の多くの差別を受けている方々、特に障害者差別解消法が成立したもとで、本市では障害者のみなさんが「合理的配慮の提供義務」を具体化する条例を心待ちにされています。このことも指摘、審議してきました。

その中で「合理的配慮の不提供」も、この条例案5条で禁止している「不当な差別的取り扱い」に含まれうることが確認でき、障害者やSOGI(LGBT)にかかわる個別条例を制定することも、この人権条例を制定するからと言って、閉ざされるものではないということも確認できました。

また先ほど提起された「法律と条令の整合性」という点でも、私たちはこの間徹底的に問題提起し審議してきました。また「パブコメから条例制定までの期間が短い」という指摘もありましたが、私たちは期間が限られた中でも丁寧な審議が必要と考え、専門的な参考人を招いた審議を求めましたが、それは否決されました。それでも私たちは独自に法律家・専門家の皆さんから意見を伺い、質疑をする中で憲法原則にかかわっても一定の担保ができました。また障害者のみなさんをはじめとする人権全般とのかかわりでも後退するものではないことが確認できたと考えます。

その上で、市がヘイトスピーチを許さない、という決意を示す重要な意義があることから、この条例案については賛成するものですし、継続とせず採択すべきと思います。

自民党の「継続審議を」の提案は賛成少数の方向になり「取り下げ」に

日本共産党の後に、「公明党」「みらい」も私たちと同様に「継続にせず採決を」「条例案には賛成」との意見を表明。「チーム無所属」は「継続」を主張しました。
そのため「継続審査」の提案は成立の見込みがなくなったので、自民党から「付帯決議案」の提案が行われました。

自民党提案の付帯決議案と、日本共産党の立場の表明

自民党の付帯決議案は以下のとおりです。

「議案第 157 号川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例の制定について」に対する附帯決議案

1、本市における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の状況、本条例の目的や施策の内容等にっいて広く市民に周知徹底を図り、市民の理解の下、本条例を円滑に施行していくよ
う努めること。

2、本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りであるとの基本的認識の下、本邦外出身者のみならず、日本国民たる市民に対しても不当な差別的言動が認められる場合には、本条例の罰則の改正も含め、必要な施策及び措置を講ずること。

3、前項に掲げるもののほか、不当な差別のない人権尊重のまちづくりを一層推進するため、本市における不当な差別の実態の把握に努め、その解消に向けて必要な施策及び措置を講ずること。


これに対する日本共産党の意見として、以下のように述べました

・『1』と『3』については異議はなく賛成できる

・『2』については、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動以外のものであれば、いかなる差別的言動であっても許されるとの理解は誤りである」との内容については、ヘイトスピーチ解消法の衆参での付帯決議と同等の内容のものであり、理解できる

・しかし『2』の後半部分の「本条例の罰則の改正」については、これまで詰めて議論してきた、罰則にかかわる構成要件をまったく違うものに変えることになるため、賛同することはできない。

・また、同じく『2』の後半部分の、「日本国民たる市民に対しても不当な差別的言動が認められる場合…」との内容については、本条例案が根拠法としている「ヘイトスピーチ解消法」では「本邦外出身者」しか差別の禁止規定に含んでいないものであり、これも賛同できない。

・したがって、『2』の後半部分を削除していただきたい


共産党の立場は明らかにしました。あとは他の会派が「持ち帰って相談する」と述べた結果が、9日(月)に明らかになります。

どちらにせよ、自民党も付帯決議案を出す際に「賛成する」ことを前提としていたので、成立することは間違いないという状況になっています。

後は週末の活動をしっかりやって、9日を待つのみです。

港町ノボリ

字だけだと寂しいので、昨日の駅頭宣伝で撮った写真を、なんとなく添付してみます。

片柳すすむ

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