片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

性自認と性的指向にかかわる施策について一般質問―性別記載欄、アウティング、学校での申し出る前からの配慮

2018年6月23日

一般質問を行いました。テーマは、①八丁畷駅西口改札にJR券売機の設置を、②藤崎保育園入口交差点など安全対策を、③ヘイトスピーチとガイドラインについて、④高校内居場所カフェについて、⑤性自認と性的指向にかかわる施策について、の5つでした。今日は性自認と性的指向(いわゆるLGBTs)にかかわる施策についてご報告します。

質問①・どんな課題や内容を検討しているのか

性自認と性的指向にかかわる施策について市民文化局長に伺います。
代表質問に対する答弁で「多様な性のあり方について課題の抽出を行い、検討に着手した」と述べられましたが、どのような課題を抽出し、またどういった項目や内容の検討に着手したのか、伺います。

答弁①・市民文化局長

性的マイノリティに関する施策についての御質問でございますが、
現在、これまで取り組んできた施策や、社会情勢を踏まえた動向について、課題の抽出を行っており、職員向け研修をはじめ、企業向け研修や、当事者等による「情報共有ルーム」のほか、公的書類における性別記載欄のあり方等についての検討に着手したところでございます。

質問②・性別記載欄の削除と配慮、今後の書類作成の基準づくりを

 性別記載欄について伺います。2003年度から2006年度にかけて全庁的な調査を行い、不要な性別記載欄は削除してきたとのことです。しかし10年以上経過し性自認などにかかわる認識も変化しています。今後、市が作成する書類やアンケートなどの性別欄について、法的に義務付けられたものや、事務上必要とするものを除いて不要なものは削除すべきです。また性別欄を設けるときにその必要を説明すること、「男」「女」の欄以外に「その他の性自認」の欄を設けるなどの配慮を行うことなどが必要です。
 これらのことを明確にして、今後の書類作成における性別欄の基準をつくるべきと思いますが、市民文化局長に伺います。

答弁②・市民文化局長

性別記載欄についての御質問でございますが、
性自認に係る認識の変化等を踏まえ、庁内より性別記載欄に関する相談等が寄せられた際には、性別の調査が不要な場合は記載欄を削除し、必要な場合には、「男性」、「女性」に加え、「その他の性自認」を記載できる自由記載欄を設けるよう要請しているところでございます。
性別記載欄の見直しにつきましては、多様な性のあり方を尊重する視点からも大変重要であると認識しておりますので、改めて実態を把握し、不要な記載欄を無くすよう取組を進めてまいります。

質問③・国立市の条例を参考に「アウティングの禁止」を条例に盛り込むべき

2015年に国立市にある一橋大学で、同級生に同性愛者であることを告げた大学院生が、そのことを暴露され自殺に追い込まれた「アウティング事件」が起きました。国立市は、性的指向、性自認等に関する公表の自由を個人の権利として保障し、アウティング、つまり暴露することを禁止する条例を策定、パンフレットでは「性的指向と性自認の公表は、個人の権利です。公表するか又はしないかの選択は本人が決めることであり、他の人が公表を強制又は禁止してはなりません。このため、本人の意思に反して、勝手に性的指向や性自認を誰かに言ったりしてはなりません」と説明しています。
人権全般を見据えた条例にむけて検討中とのことですので、国立市のようにアウティングの禁止を、本市の条例にも盛り込むよう検討すべきと思いますが伺います。

答弁③・市民文化局長

アウティングの禁止についての御質問でございますが、
国立市が制定した条例につきましては、本年5月に、同市の条例所管部署にヒアリングを行い、本市の条例作成の検討に当たって、事例のーつとして、参考にさせていただいているところでございます。

質問④・カミングアウトしなくても人権が尊重されるよう条例・施策に位置づけを

一橋大学のアウティング事件のきっかけも、当事者が性的指向をカミングアウト、つまり自分が同性愛者だと知らせたことでした。宝塚大学の日高教授の調査によると自分の性的指向をカミングアウトした相手の人数が増えるほど、暴露される可能性も高まり、当事者の自殺リスクは高まることが明らかにされています。
ですから当事者には「自分の性的指向を明らかにしたくない」という方が相当多くおられます。したがって行政には「自ら性自認や性的指向を明らかにしなくても、人権を尊重する」という立場で取り組むことが求められています。
この分野に先進的に取り組んでいる世田谷区の担当者の方も「当事者自ら性的指向や性自認を明らかにしたことを行政が認めることで、何らかのメリットがあるという制度にはしていない。そうすれば行政が当事者にカミングアウトをするように誘導していることになってしまう。カミングアウトしていても、していなくても、性的指向と性自認が典型的な方ともまったく同じ対応をするのが、行政の本来の姿だ」という趣旨のことを述べておられました。
自ら性自認・性的指向を明らかにしなくても人権が尊重されることを、今後条例はじめ市の施策に位置づけることが必要と考えますが、市民文化局長の見解を伺います。

答弁④・市民文化局長

人権の尊重を施策に位置付けることについての御質問でございますが、
本年5月に、外部講師をお招きし、アウティングに関する内容につきましても、理解が深められるよう職員向け人権研修を実施したところでございます。
今後も、実施を予定しております市民・企業向けのイベント等におきまして、様々な人権に係る意識普及を図るとともに、引き続き、人権施策推進基本計画「人権かわさきイニシアチブ」に掲げる「人権を尊重し、共に生きる社会を目指して」の理念を踏まえ、人権施策を推進してまいります。

質問⑤・「生徒・保護者から相談があった場合」ではなく、その前からの配慮・対応を

 引き続き性自認と性的指向に関わって、今度は学校での対応について教育次長にうかがいます。
文科省は「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」の通知を出し、児童生徒の性自認に基づいた対応を求めています。この通知についての3月議会で石川議員の質問に対する答弁は「学校において児童生徒や保護者から相談があった場合には」「具体的な支援を行ってきた」というものでした。
これまで示してきたように、自ら性的指向・性自認を明らかにするかどうかに関わりなく、人権を尊重する取り組みが広がっています。「いじめられるかもしれない」「暴露されるかもしれない」という思いがあるからこそ、児童生徒は困っていても助けを求められない実態があります。だからこそ、「生徒や保護者から相談があった場合」だけでなく、その前からの配慮・対応が必要と考えます。教育次長に伺います。

答弁⑤・教育次長

性自認や性的指向に関する学校での対応についての御質問でございますが、
これまでも、児童生徒が自身の状態を秘匿しておきたい思いがある場合があること等も踏まえつつ、児童生徒が性自認や性的指向を申し出る前の教職員の対応として、性的マイノリティ全般についての言動に配慮すること、悩みや不安を抱える児童生徒の良き理解者となること等を、ライフステージに応じた研修等において周知してまいりました。
今年度は、安心して相談できる環境をさらに整えるために、性的マイノリティの方を講師とした、養護教諭の研修会などを実施する予定でございます。
今後も、性自認や性的指向に関する教職員の理解を深め、すべての子どもたちが安心して過ごせるような環境づくりを推進してまいります。

質問⑥・性自認などに悩む児童生徒向けに、学校向けブックリスト・校内掲示物などの情報提供を

文京区が職員・教職員向けに出している「性自認および性的指向に関する対応指針」では、「羞恥心やハラスメント、差別を恐れて」教職員に言い出せない場合もあるので、児童・生徒が「自分で調べられる複数の手段を用意すること」としています。具体的には「図書の配置や校内新聞等の掲出物」で性的指向・性自認に関する情報を届けることで、「当事者の子どもの抱える不安や疑問の解消の一助になる」「他の子どもたちの理解促進にもつながる」と対応策を提示しています。
大阪・堺市では、市立図書館が小学校向け、中学校と高校向けのブックリストを作成し、学校向けに提供する取組みを始めました。これらも参考に、学校現場が実情に合わせて活用できるよう、校内掲示や学校内での図書の配架について教育現場を支援する取組みや情報提供を進めるべきと思いますが、伺います。

▼中学生・高校生向けブックリスト

ck0001 (2)

ck0008 (2)

▼小学生向けブックリスト

0001

0008

答弁⑥・教育次長

教育現場を支援する取組についての御質問でございますが、
市立学校におきましては、子どもの発達の段階に応じて、性自認や性的指向に関する資料の校内掲示や、関連書籍の配架といった対応を行っている学校もございます。
教育委員会といたしましても、性自認や性的指向を言い出せない児童生徒が、安心して学校生活を送ることができるよう、各学校や他都市の取組事例を情報提供するなど、学校の支援に取り組んでまいります。

意見・情報提供、条例むけた検討を

各学校や他都市の事例を情報提供するとのことです。校内掲示物やブックリスト、世田谷区で取り組まれている小学校・中学校などの発達に応じた性自認や性的指向にかかわる授業などを参考に、生徒が申し出る前からの対応や情報提供を行うよう要望します。市民文化局もふくめ「当事者がカミングアウトしてもしなくても配慮や対応がされる、人権が尊重される」いう方向に進むよう、条例含めて検討し施策を行っていただくよう要望して、質問を終わります。

片柳すすむ

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