片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

解消法の「4つの要件」に当てはまる明らかなヘイトスピーチには厳しい対応をー決算審査特別委員会

2017年9月20日

9月20日の決算審査特別委員会(文教分科会)でヘイトスピーチへの対応について質問しました。質問と答弁を紹介します。

質問:市の「ヘイトスピーチ許さない」との意思を明確に啓発活動を

3款1項4目人権男女共同参画費に関連してヘイトスピーチ抑止の啓発活動について伺います。ヘイトスピーチデモ主催者に対し、議会が一致して公園使用不許可を市長に要望するなど、「オール川崎」での取り組みが強まったのが2016年度でした。この間も関東大震災における虐殺の歴史などについて新たな関心が寄せられており、引き続き「ヘイトスピーチを許さない」という意思を明確に本市が発信していくことが求められています。
2016年度の啓発活動の主なものをお示し下さい。また今後の啓発についての考え方についてうかがいます。

答弁

ヘイトスピーチについての御質問でございますが、昨年度の主な啓発活動につきましては、第3庁舎及び各区役所、市民館等庁舎内におけるポスター掲出、JR川崎駅自由通路の河川情報表示板及び各区役所行政情報モニターを活用した広報掲出、また、市民まつりや人権フェア等のイベントにおけるチラシ配布の他、2月6日から4週間、南武線車内における動画広告などを実施いたしました。今後につきましても、差月リと偏見のない社会の実現には啓発活動が重要と考えておりますので、引き続き広報の充実に努めてまいりたいと考えております。

質問・ふれあいネットリニューアル前後の対応は?

公共施設利用予約システムでの、ヘイトスピーチ抑止対策についてです。この間、ヘイトスピーチを抑止するために、ふれあいネットでの啓発広告の表示などを求めてきましたが、ふれあいネットのリニューアル前後の対応状況についてうかがいます。

答弁

ふれあいネットについての御質問でございますが、ふれあいネットのトップページに、昨年10月から、法務省作成のバナー広告を掲載しております。本年4月のシステムリニューアル後も、引き続き、バナー広告を掲載し、ヘイトスピーチ対策に努めているところでございます。

質問・施設の予約にあたり「不当な差別的言動のために公の施設を利用できない」とすべきでは

6月に示された「『公の施設』利用許可に関するガイドライン案」に、集会等で不当な差別的言動を行わないように警告をした上で許可する、というケースを示しています。その警告文の案として「ヘイトスピーチ解消のための法律が施行されています。各施設の利用に当たりましては、同法に定める不当な差別的言動を行わないこと等関係法令を遵守して下さい」という内容が文例として出されています。
これは「警告」としては当然過ぎるのではないでしょうか。解消法の趣旨を知らせ、法令を守って利用するよう求めるのは当然のことであり、警告の段階に至らなくても行うべきではないでしょうか。
具体的には、すべての施設利用希望者に対してヘイトスピーチ解消法の「4つの要件」や法務省の3つの類型などを具体的に示して、「不当な差別的言動のために公の施設を使うことはできない」という意思を確認してから、次の予約のステップに進む、というような施設予約のあり方にすべきではないでしょうか。うかがいます。

答弁

施設利用手続きについての御質問でございますが、本ガイドライン案は、各施設の所管組織が、本市の各施設の設置・管理条例に基づき利用制限を検討・判断する場合の拠るべき基準として策定するものでございます。利用者の皆様には、各施設の利用に当たり、各種法令の遵守を含め利用条件を十分御理解いただいた上で、利用いただいているものと認識しております。
したがいまして、例えば野球場やテニスコート等の利用者まで含めて一律に「法令を守る」ということを改めて確認した上で、施設の予約に進むという手続きの流れに変更することは、施設利用の手続きの簡便性を後退させ、市民サービスの低下を招くことになるものと考えます。
しかしながら、各施設の所管組織において、当該施設の予約手続きにおいて必要な過程であると判断すれば、適切に対応されるものと考えております。
また、ヘイトスピーチとはどういうことかを利用希望者に確認することについては、差別は、国籍だけでなく、様々な形態が想定されますことから、別途、広く人権啓発を引き続き実施してまいります。

質問・ヘイトスピーチは「保障すべき言論」に当たらない。明確なヘイトについては不許可とすべき

公の施設の利用に関するガイドライン案では「不当な差別的言動」について、先にあげた「4つの要件」を引用して定義しています。
昨年の6月2日に横浜地裁川崎支部が、ヘイトデモは人格権に対する違法な侵害行為であり「集会や表現の自由の保障の範囲外」として、ヘイトデモ主催者に桜本地域への立ち入りを禁止する仮処分を決定しました。こうしたことから見ても、ヘイトスピーチは「集会や表現の自由の保障の範囲外」「保護すべき言論」には当たりません。
ヘイトスピーチ解消法の定義する「不当な差別的言動」と明らかに判断できる場合については、「表現の自由」を保障する必要はないわけですから、その時点で公の施設の利用を不許可とするべきではないでしょうか。見解をうかがいます。

答弁

不許可についての御質問でございますが、まず横浜地裁川崎支部の仮処分決定は、債権者からの一方的な申立てに基づいて裁判所が決定する暫定的処置にすぎず、「判決」や「決定」と同視することはできないことから、同仮処分決定を根拠に、ヘイトスピーチは表現の自由の保障の範囲外と断定することは難しいものと考えます。
しかし、いわゆるへイトスピーチ解消法も「不当な差別的言動は許されないことを宣言」していることから、ガイドラインにつきましては、表現の自由等の制約が過度にわたることがないよう慎重に運用していく必要があると考えております。
さらに、川崎市人権施策推進協議会からは、市の恣意的な判断を避けるため、第三者が関与するしくみが必要不可欠であると提言されておりますことから、たとえ「不当な差別的言動」と明らかに判断できる場合であっても、その時点で不許可どすることはできないものと考えております。

質問・インターネットでのヘイトスピーチ対策、削除要請の取組は?

2016年12月に、人権施策推進協議会の優先審議報告書で「インターネット上でのヘイトスピーチに関する積極的な削除要請」「ネット上のヘイトスピーチに関し、市民からの情報提供」などが示されました。それ以後、インターネットでのヘイトスピーチ対策、積極的な削除要請を行うことについて、どのように検討し取り組んできたのか、端的にお示し下さい。

答弁

インターネット上の対策についての御質問でございますが、プロバイダに対する削除要請に関して実績のある国の関係機関と連携した取組を行えるよう、情報の共有を行ったところでございます。また、本年8月から、職員によるネットリサーチの試行を開始したところでございます。

質問・「優先審議事項」にふさわしく、早急な対応を

経過を振り返ると、昨年6月に市議会の総意として議長が市長に公園使用不許可を申入れ、それを受けて市長から7月に人権施策推進協議会に「優先審議事項」として審議を要請し、12月に同協議会から、公の施設利用のガイドラインの策定、インターネット上の対策、などが答申された、という流れでした。
この間インターネット上でのヘイトスピーチも続き、今年7月16日にも中原区でデモが強行されるなど、民族差別による被害が続くなかで、「テンポが遅いのではないか」「民族差別デモが強行されてしまったし、このままガイドラインができても即応性がないのではないかといった声が当事者からも出されています。
インターネット上でのヘイトスピーチ対策や、削除要請について、6月の文教委員会で局長は、「できるだけ早い段階で効果のある対策が取れるかどうか、進めていきたい」と答弁されましたが、実際に生まれ続けている被害の実態から見ても、早い段階で実効性のある対応を行わなければなりません。市長・市の側から優先審議事項として諮問したのですから、それにふさわしく正面から早急に実効性のある対応をすべきと思いますが、局長に見解と対応をうかがいます。

答弁

ヘイトスピーチ対策についての御質問でございますが、インターネット上の対策につきましては、まずSNSを活用した発信として、 2月からフェイスブックを開始したほか、神奈川セキュリティクラウド移行後の8月から他都市の実施例を参考にネットリサーチの試行を開始するなど、順次着手したところでございます。今後も引き続き、効果的な発信のほか、国とのさらなる連携強化に努めてまいりたいと存じます。

明らかなヘイトスピーチには厳しい対応を

意見・要望を申し上げます。
仮処分決定が出ていても、まだ「判決」が出ているわけではないので、「ヘイトスピーチは表現の自由の範囲外と断定することは難しい」との答弁でした。この間本市は市民・議会が行政と共同して、ヘイトスピーチを許さない意志表示を行い、ヘイトスピーチ根絶に向けて取組みをはじめたことで、全国から注目をされており、本市のガイドラインに実効性がなければ、逆にヘイトスピーチを蔓延させるおそれすらあります。解消法や法務省の類型などに示された類型に、明らかに該当するヘイトスピーチには厳しく対処するよう要望します。
今月に入っても芸能人への民族差別や、SNS運営業者の対応への抗議行動など、インターネット上でのヘイトスピーチが大きな問題になっています。削除要請は市が毅然と対応すればできる問題であり、それを受けて削除するかどうかは基本的には運営業者にかかっています。差別を受けた当事者が自ら削除要請を行うということは、自らへのヘイトスピーチを自身で再確認すること、二次被害を受けることになります。市が削除要請を行うこと、また削除要請とネットリサーチの実施については法律家やこの分野に長けた専門家の団体と協力して、より有効に実施されるよう要望いたします。

片柳すすむ

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