片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

一般質問―多様な性のあり方に対する施策について

2017年6月23日

6月23日、市議会一般質問で「多様な性のあり方に対する施策について」をテーマに取り上げました。他にも「八丁畷駅前踏切の安全対策」「富士見プールの再整備」「洪水ハザードマップの周知」について質問しました。今回は「多様な性のあり方~」を報告します。

「LGBT」当事者の思いにこたえる施策は待ったなし

代表質問につづき、多様な性のあり方に対する施策について伺います。
この間の視察や聞き取りで、多くの当事者の方々の声に触れてきました。共通しているのは、性のあり方という人の最も基本的な部分について、認められなかったり否定されたりすることが多い社会の中で、多くの当事者が自己否定され、生きづらさを感じており、統計的な自殺企図や精神疾患の多さにも反映している、ということでした。
大阪市の淀川区・阿倍野区・都島(みやこじま)区が共同で、3区を卒業したLGBT当事者の声を集め、教員向けのパンフレットにしています。この中から当事者の声を紹介します。

40歳のバイセクシャルの方は「小学生のとき、ズボンばかりはいていたら母親がママ友からいじめにあった。スカートを強制され地獄のような日々だった。『レズ』という言葉はポルノの言葉だと思って、混乱し続けていた。また、授業の家庭科で女子が男子にクッキーを作るというイベントがあり、気持ちが悪かった。だれかにLGBTについて間違いでもなくポルノの話でもないことを教えてほしかった」と。
49歳のゲイの方は「いわゆる“オカマ”と呼ばれる大人になることに、とても大きな表現できない恐怖を覚え、絶望感に浸っていた。『男同士そんなんしたらホモになるぞ』という先生の言葉が忘れられない。小学4年のとき、『オカマと呼ばれることがとても嫌だ』という自分の意見について、学級会を1時間使って議論してくださり、クラスメートの反応が変わった。大変感謝している」と。
体は女性で性自認は男性という25歳の方は「小学校低学年のときには違和感を感じ始めていた。水着や制服。男女別の授業、『女らしくしろ』といわれることが嫌だった。高校に入って同じ悩みをもつ友人ができたことで救われた。『多様な性』について学ぶ授業があれば悩むこともなかったのに…」と。
体は男性で性自認は女性という26歳の方は「高校の先生に打ち明けると『先生のまわりにもいる』といわれて救われた。タイツ以外の代替案を提案してくれて助かった。図書館に本があれば高校まで悩むことはなかった。LGBTのニュースについてなど情報提供がほしかった」と。

こうした声からも、子どもから青年期に性のあり方について自己肯定感を育む施策をすすめること、全庁的に多様な性のあり方に対する施策をすすめることは、待ったなしの重要な取組みだと考えます。以下質問いたします。

性同一性障害相談窓口―開設からの7年間の変化と課題は?

川崎市が2010年に全国で始めて性同一性障害の相談窓口を設置してから、7年が経っています。世界でも国内の自治体での認識も変化し、いわゆるLGBTを取り巻く環境は大きく変わり始めています。
本市の電話相談の相談件数やその特徴、開設時と比べての変化やその中でどのようなことを課題と考えているか、健康福祉局長に伺います。

答弁―健康福祉局長

性同一性障害の相談についての御質問でございますが、
本市におきましては、平成22年度から、精神保健福祉センター、児童相談所及び教育委員会において、性同一性障害の方々からの電話相談等を実施しているところでございます。
精神保健福祉センターにおきましては、主に高校生年齢以上の方を対象に、保健師や社会福祉職、心理職等の専門職が、電話や面接による相談を実施しております。
相談件数につきましては、開設した平成22年度の49件以降、平成26年度 22件、27年度 18件、28年度 13件と、件数が年々減少している状況でございます。
その要因としましては、開設当初は市外からの相談が3分の2を占めておりましたが、各地において様々な相談窓口が増えできたことによるものと考えております。
また、相談の特徴につきましては、メンタルヘルスに関する内容にとどまらず、学校、職場、医療機関など日常生活の様々な場面の困難さや現在の社会制度に精神的苦痛や生きづらさを感じているなど、その内容は多岐に渡っております。
今後につきましても、性同一性障害のある本人が置かれた状況を踏まえ、多様なニーズに対応していくためには、本人や周囲の人々の性的マイノリティに関する理解の向上が課題であると認識しておりますことから、普及啓発と相談窓口の周知を進めるなど、関係局とも連携して取り組んでまいりたいと存じます。

「性同一性障害」に限らず、「LGBT」全体に対応する相談窓口に発展を

性のあり方は十人十色だという理解が広がる中で、性的マイノリティ全体を対象に相談を行う自治体が増えています。世田谷区は「セクシャルマイノリティのためのにじいろひろば」、多摩市は「LGBT悩み相談」、横浜市でも「セクシャリティに関する電話相談」を行っています。ネット・SNSが広がる中で、性自認や性的志向で悩む若者が、性的な出会いを目的とする業者に狙われる危険性が増えています。
安心して悩みを話せる窓口を、自治体が門戸を広げて開設することに大きな意味があります。本市の相談窓口は、「性同一性障害」を対象としていますが、いわゆるLGBTなど性自認や性的志向にかかわる悩み相談へと窓口のあり方を広げ発展させるべきではないでしょうか、健康福祉局長に伺います。

世田谷多摩市

SHIP1

答弁―健康福祉局長

LGBTに関する相談窓口についての御質問でございますが、
精神保健福祉センターで実施しております、性同一性障害に関わる電話相談においては、相談者自身が性同一性障害であることを自覚して、具体的な相談をされる場合や、性に対する違和感を覚え、性同一性障害なのかもわからない状況のなかで、不安を感じて相談をされている場合もございます。
また、性同一性障害と特定できないLGBT全般に関する場合であっても、生活上の出来事と困りごとについて、こころの悩みを中心に聞き、相談者本人の迷いや不安、葛藤、そして希望を踏まえて、本人自身ができることや必要な支援を一緒に考えていくとともに、状況に応じて、様々な関係機関と連携して、医療機関や当事者団体を紹介するなど、相談者の気持ちに寄り添った対応をしております。
相談窓口につきましては、市民文化局において、現在ホームページに、性同一性障害についての悩みをお持ちの方へのページを開設しておりまして、昨年度、当該ぺージにLGBT等に関する相談に取り組んでいるNPO法人などへのりンクが設定されたところでございます。
今後も、関係団体と協力しながら、多様な相談に対応できるよう、関係局と連携した取り組みを進めてまいりたいと存じます。

自己肯定感をはぐくめる、当事者の「コミュニティスペース」設置を

先ほどの横浜市、世田谷区をはじめ、大阪市淀川区や文京区などでも当事者の居場所づくりが始まっています。文京区のコミュニティスペースでは「自分のようなものが受け入れられるのか心配で、直前まで来るかどうか迷ったけれど、参加してよかった」との声が寄せられているそうです。どの自治体でも「行政がかかわること」「公的な施設が会場となっていること」により、安心感を与えているのが共通点です。
横浜市はNPO法人と連携して、「10代の人」「女性が好きな女性」「性別に違和感がある人」などセクシャリティや年代を限定して当時者の集まる場を設定しています。
こうした居場所は、特に思春期から青年期にかけての自己肯定感をはぐくむ上でも重要と考えます。当事者団体などと協力して、安心して集まれるコミュニティスペースをつくるべきと思いますが、市民文化局長に伺います。

答弁―市民文化局長

コミュニティスペースなど居場所づくりについての御質問でございますが、
平成28年4月に公表いたしました「人権に関する市民意識調査」におきまして、はじめて性的マイノリティの人権に関して調査を行ったところ、「特に問題だと思うものは何ですか」との質問に対しまして、約55%の方から「社会的理解が低いため、誤解や偏見があることとの回答がありました。このように、性的マイノリティの方々に対する誤解や偏見が残っておりますことから、まずは正しい理解を促進することが重要であると考えております。
一方、関係団体等へのヒアリングなどから、当事者の方が孤立しないよう、居場所となる場も必要であると認識しておりまして、そのような機会の創出にあたりましては、関係する団体等と協力することが必要でございますことから、啓発イベントなどを通じて各団体と十分な信頼関係を構築するよう取り組んでまいります。

職員全体を対象に研修を

 職員研修について総務企画局長に伺います。
大阪市淀川区の担当の方は、行政は「LGBTの当時者から申し出があれば対応する」のでは不十分で「LGBTの方が自ら申し出しやすくするのが行政の役目だ」と位置づけて職員研修などに取組んでいると語っていました。世田谷区の担当者は、「パートナー宣誓をしたら何らかの行政サービスが受けられる、というのは当事者にカミングアウトをするよう誘導していることになる。カミングアウトしたくない当事者の方にも、役所の窓口で他の市民とまったく同じ対応をすることをめざしている」と話されていました。
 文京区では今年度、全教職員を対象に研修を行います。もろもろの人権課題の中の一つではなく、LGBTに絞った研修として行うとのことで、学校関係は「校長と幼稚園長」、「副校長」、「教職員」の3つの枠で行い、職員にも管理職研修とともに、事務職員を中心にした一般職員研修を行うとのことです。本市でも全職員を対象にした研修を行うべきと考えますが、総務企画局長に伺います。

答弁―総務企画局長

職員研修についての御質問でございますが、
職員が市民全体の奉仕者として、性的マイノリティを含めた様々な人権に関する知識を身につけることは必要なことから、これまでも新規採用職員や中堅職員、新任係長、新任課長等の階層別研修において、定期的に人権に関する研修を実施してきたところでございます。
また、関係局においては、人権意識の普及を中心、に性的マイノリティをテーマとした講演会や映画上映会などを開催しており、管理職及び職員が受講しているところでございます。
さらに、今年度につきましては、階層別研修とは別に「性的マイノリティと人権」の講演を関係局と共催したほか、一般の職員を対象にした研修を企画しているところでございます。
今後につきましても関係局と連携しながら、幅広く人権に関する職員の理解を深めるための取組を進めてまいりたいと考えております。

教職員全員を対象に研修を

 この質問の冒頭に述べたとおり、学齢期の当事者に適切に対処する上で、教職員の研修が極めて重要です。本市の教員への「LGBT」をテーマにした研修の状況を、初任者研修や管理職の研修など教員のライフステージごとにお示しください。先ほどの文京区の他に、岡山市でも全教員分の啓発パンフレットを印刷し、各学校では養護教諭が講師役として研修を進めていくとのことです。全教員を対象にした研修を行うべきと考えますが、教育次長に伺います。

答弁―教育次長

性的マイノリティに関する教員への研修についての御質問でございますが、
教育委員会といたしましては、これまでも、初任者研修、10年経験者研修、管理職研修等、ライフステージに応じた研修において、性的マイノリティについての理解を深めるための研修を実施してまいりました。
平成28年度は、文部科学省が作成した資料「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について」を活用し、各研修において性的マイノリティの現状や適切な理解の促進を図ってきたところでございます。
また、今年度は、ライフステージに応じた研修を継続して実施するとともに、全市立学校から1名ずつ参加する人権尊重教育推進担当者研修において、 LGBTの方を講師とした研修を実施する予定でございます。研修を受けた教員が学校においてその内容を伝えることで、全教員の意識を高めていきたいと考えております。
今後も、配慮を必要とする児童生徒が安心して学校生活を送ることができるよう努めてまいります。

意見要望

 実際に相談窓口では性同一性障害に限らず「性に対する違和感や不安がある」という方など幅広い方に対応されているとのことです。当事者が相談しやすくするために電話相談の対象拡大の検討を要望します。「居場所は必要と認識している」との答弁もありました。コミュニティスペースの設置をお願いします。なかなか自ら申し出ることができないのが性自認・性的志向の問題の特徴です。「当事者が申し出たら対応する」というのでは不十分です。全職員規模での研修を要望して次のテーマに移ります。

片柳すすむ

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