片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党川崎市議会議員
議会活動報告

独裁的な権限を内閣に与えることは許されない―「緊急事態に関する国会審議を求める意見書案」に反対

2022年4月2日

3月18日の市議会本会議で、自民・公明市議団が「緊急事態に関する国会審議を求める意見書案」を提案しました。

いわゆる「緊急事態条項」に向けた国会議論や国民世論喚起を求めた意見書案で、日本共産党として反対討論を行いました。実は私が市議団の中で反対討論の原案を書く担当でした。なかなか苦戦しましたがみんなで良いものを練り上げることができました。討論者は小堀祥子議員でした。どうぞご覧ください。

「緊急事態に関する国会審議を求める意見書案」に対する反対討論

私は、日本共産党を代表して、ただいま提案されました、意見書案第2号「緊急事態に関する国会審議を求める意見書」について、討論を行います。

本案は、コロナ感染症の拡大によって医療提供体制の崩壊の危機を招く事態が発生したこと、自然災害等による地方自治体の行政機能が停止したことなどを理由にあげ、緊急事態に強い社会をつくることが必要であるとしたものです。その上で憲法のあり方や、平時から緊急時のルールの切り替え、つまり緊急時に憲法の規定から外れた権力を内閣に与えることについて国会で議論を行うこと、また国民的な議論を喚起することを求めているものです。

第一に、新型コロナ感染症や自然災害等への対応についてです。

これらについてはすでに、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、原子力災害対策特別措置法、新型インフルエンザ特別措置法、災害救助法など、憲法の下で法制度と体制が整備されています。現行の法律で対応できるものであり、憲法を変える必要などは全くありません。仮にいまの法律で十分に対応できないことが明確になった場合には法律を改正すれば良いだけです。

また、本案は被災した自治体の行政機能の停止を理由に内閣への権限集中を求める内容になっています。しかし、2015年に日本弁護士連合会が東日本大震災の被災3県の37市町村に対して実施したアンケートでは「災害対策・災害対応について市町村と国の役割分担はどうすべきか」との質問に「市町村主導」と19自治体が答えたのに対し、「国主導」は1自治体にすぎませんでした。

さらに、被災経験のある福島県弁護士会は「被災地の復興のために何より必要なのは、政府に権力を集中させるための法制度を新設することよりも、むしろ、事前の災害・事故対策を十分行うとともに既存の法制度を最大限活用することである」と意見を表明しています。

これらのことから、中央政府に権限を集中させるのではなく、被災者に一番近い自治体である市町村に主導的な役割を与えることが重要なことは明らかです。

第二に、内閣と内閣総理大臣に権限を集中させれば、国家権力の濫用が危惧される点についてです。

本案のいう「平時から緊急時のルールの切替え」の「平時」とは国会で予算案や法案を審議することなど、立憲的な憲法秩序そのものです。他方、「緊急時のルール」とは、内閣がこうした国会による民主的なコントロールも裁判所による司法統制も受けなくなる規定、ということになります。つまり「緊急時」に権限を内閣に集中させることで独裁的に権力を扱うことが可能になってしまう規定をつくる、ということです。

実際に、緊急事態条項は過去に濫用されてきた歴史があります。ヒトラーはワイマール憲法の大統領の緊急命令の規定を根拠に、政敵の選挙集会の強制解散、機関誌の発禁処分、警察官の政敵への武器使用の容認などを行いました。多数のナチスの政敵を逮捕するなど、大統領非常権限に基づく緊急命令によりヒトラーの独裁政権が樹立され、その後ユダヤ人の大量虐殺などの重大な人権侵害が行われました。

こうした歴史の反省を踏まえているからこそ、日本国憲法では緊急事態条項を設けていないのです。1946年の衆議院で当時の金森徳次郎国務大臣は、日本国憲法案に「緊急勅令」「緊急財政処分」「非常大権」などの規定がない理由について――①民主政治を徹底させて国民の権利を充分擁護するためには、非常事態に政府の一存で行う措置は極力防止しなければならないこと、②「非常」という言葉を口実に政府の自由判断を大幅に残しておくと、どの様な精緻(せいち)な憲法でも破壊される可能性があること、③特殊の必要があれば臨時国会を召集し、衆議院が解散中であれば参議院の緊急集会を召集して対処できること、④特殊な事態には平常時から法令等の制定によって濫用されない形式で完備しておくことができること――と答弁しています。

つまり、日本国憲法は緊急事態に行政府への権力の集中で対応するのではなく、あくまでも民主政治を徹底することにより対応すべきだし、それが可能だとして緊急事態条項を設けなかったのです。

独裁的に一部の権力者に権限を集中させ、その権限が濫用された場合にどのような事態になるのか、まさにいまその重大な弊害に国際社会が直面しているのではないでしょうか。

以上に述べてきたように、感染症や自然災害には、いまの憲法の下の現行の法律で対応できるのですから、独裁的な権限を内閣に与えるような憲法のあり方の検討などを求める本意見書案には反対することを表明致しまして、討論を終わります。


私たち日本共産党のほか、みらい、大西議員、重富議員が反対しましたが、自民・公明、残りの無所属議員の賛成で可決されました。


↓自公提案の意見書案本文はこちらです↓

緊急事態に関する国会審議を求める意見書(自民・公明提出)

新型コロナウイルス感染症は多くの企業の経営に深刻な影響を与え、日本経済に大きな打撃を与えるだけでなく、感染者の急激な増加により、医療従事者や病床が不足するなど、医療提供体制の崩壊の危機を招くという事態が発生した。
また、近年は毎年のように集中的な豪雨等による河川の氾濫被害が生じており、本市においても、令和元年東日本台風によって甚大な浸水被害が生じている。
さらに、今後30年以内に高い確率で首都直下地震や南海トラフ地震の発生が予想されている中で、東日本大震災においては道路を塞ぐ震災瓦礫等の撤去が思うように進まず支援物資の輸送に遅れが発生するとともに、燃料不足を背景とした医薬品等の搬送の遅れや長期間のライフラインの停止による病院等機能の停止を要因とする震災関連死が発生するなど、被災地方自治体の行政機能の停止が復旧活動に大きな影響を及ぼした。
国家の最大の責務は、緊急時において国民の命と生活を守ることにあり、これら緊急事態に強い社会をつくることは、国全体にとって喫緊の課題である。
よって国におかれては、緊急事態に対応できる国づくりに向け、緊急時における憲法のあり方や、関連法規の見直しによる平時から緊急時のルールの切替え等について、国会における建設的かつ広範な議論を行うとともに、広く国民的な議論を喚起する取組を進めるよう強く要望するものである。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

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