片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党川崎市議会議員
議会活動報告

『人権条例』-共産党はどう論戦したのか ≪後編「ヘイトスピーチ対策部分」≫

2019年12月19日

前回に続き『川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例』(以下、人権条例)について、どういう立場で日本共産党が議論したのか、について書きたいと思います。

今回は「ヘイトスピーチ対策部分」についてです。

(注意:6月24日の文教委員会までの議事録しか発表されていないので、それ以外の部分は片柳のメモなどによる大要で必ずしも正確でない場合があります。正式な答弁については議事録発表後にご確認ください。)

人権条例の条文はこちら(http://city.kawasaki.jp/980/page/0000112486.html →議案157号)です。

先に結果から言うと、憲法の観点から論戦した結果、下の画像のようなポイントで当初の段階から「変更」あるいは答弁で明確化をはかることができました。

人権条例 党の論戦2

■立脚点は「ヘイトスピーチ被害の実態」

ここでも、大前提となるのはヘイトスピーチ被害の実態に立つことであり、私たちは「罰則もありうる」という立場で議論してきました。それと同時に日本国憲法の原則、とくに21条の「表現の自由」、31条の「適正手続きの保障」の観点(これらが保障されなければ、行政権力による濫用や恣意的な運用が行われてしまうおそれがあるため)から検討、審議してきました。全国初の言動に対して刑事罰を科すという条例案でしたので、この点はとりわけ丁寧な議論が求められました。

■漠然とした規定・過度に広範な規制は『違憲』となる

なぜそこまで丁寧な議論が求められていたのか。

それは、憲法による表現の自由は人権の体系上「優越的地位」にあるからです。表現の自由は「自己実現」と「自己統治」にとって不可欠な機能を担うことから、そうした地位にあります。

ですから、表現の自由を規制する法律(条例)をつくるときは、厳格な基準に基づく審査が求められます。

人権条例 党の論戦3

具体的には、①「やむにやまれぬ」理由に基づくこと、②「必要最小限度の制限」であることが要求され、そうでなければ「憲法違反」と判断されることになります。

規定が漠然・不明確な場合は違憲とされます(「明確性の基準」「漠然性ゆえに違憲無効」の理論」)。また、過度に広汎な規制の場合も違憲とされます(「過度の広汎性ゆえに違憲無効」の法理)。

さらに刑罰を規定する場合は、規制対象となる行為とそれに違反した場合に科される罰則との間に均衡が図られていることが、憲法31条の罪刑法定主義の観点から必要です。

こうした理由で、日本共産党は本条例案を丁寧に検討・審議してきました。

■素案からパブコメを経て、憲法の観点を踏まえた『変更』が行われた

6月に発表された素案段階以降の、パブリックコメントなどで寄せられた当事者の皆さんをはじめ市民や専門家の意見、日本共産党の論戦などを反映して、「憲法の観点での明確化・限定化」を図る内容で多くの点が変更されました。

0002 (2)

これだと見にくいので、「変更後」を拡大してみます↓

0002 (2)_henkougo

長らく市民運動で川崎市政に関わっているIさんは「素案→パブコメ→成案となっていく過程で、主要点が変更されることはこれまでほとんどなかった。これは画期的なことだ」と述べておられました。

日本共産党の上記のような立場からの議論は、こうした「憲法の原則をふまえた明確化」につながる重要な役割を果たしたものと思いいます。

■日本共産党の論戦で明確化・改善された部分

日本共産党の論戦でどこまで「明確化」できたのか、なるべく全体像が見えるように書いていきたいと思います。

以下、素案段階から成文になるまでに変更された部分、「案」の段階で問題点を指摘して答弁で改善の方向が確認できた部分を中心に、具体的に見ていきたいと思います。

先に結果のポイントを挙げると、冒頭の画像のような諸点が前進しています。

□「不当な差別的言動」の『手段』『類型』

条例12条では、不当な差別的言動について

▼『場所』(市の区域内の)

・道路

・公園

・広場

・その他の公共の場所

▼『手段』

・拡声機(携帯用含む)を使用

・」看板・プラカードその他これらに類する物を掲示

・ビラ、パンフレットその他これらに類する物を配布

以上のような『場所』と『手段』により、本邦の域外にある国又は地域を特定し、当該国又は地域の出身であることを理由として、以下の『類型』のような不当な差別的言動を禁止しています。

▼『類型』

① 本邦外出身者をその居住する地域から退去させることを煽動し、又は告知するもの

② 本邦外出身者の生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加えることを煽動し、又は告知するもの

③ 本邦外出身者を人以外のものにたとえるなど、著しく侮辱するもの

□共産党の論戦

この部分では以下のような質疑をしました(Qが共産党の質問、Aが市民文化局の答弁(*メモ起こしも含む))。

Q・その他公共の場所とはどういう所か?「室内」や「市の施設の室内は含むのか?」
A・室内は含まないが、誰でも入れるオープンスペースで出入り自由の場合は対象となる。「貸し切り」などの場合は含まれない。

Q・(素案段階で「手段」に含まれていた)「多数の者が」「一斉に」「大声で」「連呼する」というのはどういう概念となるのか?
A・個別具体的に考える→(片柳Q=「個別具体的に考える」では憲法の立場と矛盾する)→意見ふまえて法制局と協議する →「案」の段階で削除された

Q・「退去する」「あおる」「告知する」とはそれぞれどういう定義か、あいまいではないのか
Q・「あおる」という用語は、具体的にどんな行為をさすのか不明確だ。明確化をはかるべき
Q・「侮蔑」と言う用語は、『侮辱罪』とは異なり法律上不明確で広く解釈されるおそれがある。明確化をはかるべき。
→案の段階で「あおる」は「煽動する」に、「侮蔑」は「侮辱」に変更された。

□勧告・命令、「認定」の範囲

▼初回の認定について

Q・「勧告」を行う前提として、1回目の不当な差別的言動がどのような対象や地域で行われたのかを「認定」することが前提として必要になる。条例案で明文規定されていないが、市が「認定」し審査会の意見を聴くという手順があるのか?
A・その通りだ

Q・この「認定」は、その後の「勧告・命令」の段階に進むときに「(認定されたときと)同一の理由」かどうか、が重要になるので、それを規定する重要な内容だ。施行規則などに明記するべきだ
Q・「認定」の効力は、どのくらいの期間続くのか
A・特別な定めはない

□「差別防止対策等審査会」(以下・審査会)のありかたについて

▼「審査会」と「表現の自由」との関係

Q・(素案段階では)「勧告」「命令」の前に「審査会の意見を聴く」となっているが、「公表・罰則」の前にも審査会を開き意見を聴くべきだ
→「公表・罰則」の前に「審査会を開き意見を聴かなければならない」という項目が置かれた(15条)

Q・「審査会」の意見を聴く、としているのは、表現の自由を担保するためか?
A・その通りだ

Q・13条14条で、「(勧告・命令の前に)審査会の意見を聴かなければならない」が、「緊急を要する場合で、あらかじめ、その意見を聴くいとまがないときはこの限りではない」とされているが、「緊急を要する場合」を判断するのは誰か
A・市長だ

Q・例えば「2~3日後にヘイトスピーチを行う旨の予告があった」という場合にも、極力審査会を開催する努力をするべきだ
Q・市長の権限で審査会を開催せず「勧告」や「命令」を発した場合も、後日速やかに審査会を開催し、報告・検討すべきだ。その際、「勧告・命令が無効だ」となることもありうるか。
A・直前の場合でも審査会開催の努力をするすみやかに後日開催する/当然勧告・命令が無効になることもありうる

Q・これらのことは重要なので施行規則に明記するべきだ

▼勧告・命令の有効範囲=「地域」とは

Q・13・14条の勧告・命令の有効範囲として「地域を定める」とされているが、どのように定めるのか
A・行政区、道路のほか「〇〇から××m以内」などのように定めることを想定している。

▼対象が「同一」とはどういうことか

Q・13条・14条の勧告・命令の前提となる「同一理由差別的言動」の対象が『同一』とはどういうことを指すのか
A・同一の国又は地域の出身であることを理由とする、ということだ
Q・1回目が中国人、2回目が韓国人を対象に行われた場合は含まれない。2回とも同じ国・地域を対象とした場合は同一とカウントするということか
A・その通りだ

▼勧告・命令の有効期間

Q・勧告・命令の有効期間はどのくらいか。15年・30年も有効、ということになるのか?
A・法制当局と相談したい
→(案段階で)勧告・命令とも「6月間」とされた

□理念法である「ヘイトスピーチ解消法」に対し、罰則規定を持つ上乗せ条例は可能か

Q・ヘイトスピーチ解消法は、禁止規定も罰則も設けていない。法律が定めていないのに条例で罰則を定めることができる根拠はどこにあるのか。今回の人権条例がこの点をクリアできる理由は何か? 
A・解消法は理念法だが、制裁のための行政刑罰にする。明確な差別の意図を持つものには「教育・啓発」では通じない。繰り返すものには罰則が必要。解消法の「本邦外」ではなく「特定国」と限定した。運用も慎重にする。行政刑罰の判断も検察・警察の2重チェックができ、表現の自由への配慮ができる。「違憲」との指摘を受けることもない。立法事実があり、条例は「上乗せ」として規制ができると考える。

Q・大阪市が地方公務員法36条に関して、法律に定めのない地方公務員への罰則を設けようとした例をあげたが、国会で「(この場合に)地方公共団体の条例で罰則を定めることは法律上許されるか」という質問に対し、「同法は地方公務員の政治的行為の制限については罰則を付すべきではないとの趣旨であると解され、条例で罰則を設けることは法律に違反し許容されない」と答弁されている。「上乗せ条例を制定できる」と市は言うが、法律が「罰則を付すべきではない」としている場合には、罰則はできない、という答弁だ。ここはクリアできると考えているか。
A・クリアできる。立法事実があり上乗せできる。

□「市民の責務」

Q・4条で「市民・事業者の責務」として「市の差別解消の施策、人権施策に協力するよう努めなければならない」と、12条では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動を行い、行わせてはならない」とされている。不当な差別的言動が目の前で行われているのに、それを市民や事業者が見過ごしてしまった場合も、12条の「行わせた」に含まれる、と読むこともできるがどうか。
A・そのような事例は含まない
Q・ 12条は「刑罰の構成要件」にあたるので解釈を明確にするために質問した。本来ならば「不当な差別的言動を行い、または人をして行わしめてはならない」などとすべきだった。

ブログ新着記事

  • ブログ過去の記事

PAGE TOP