片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党川崎市議会議員
議会活動報告

『人権条例』ー12月議会での日本共産党代表質問(石川議員・12/14)

2019年12月5日

12月4日の川崎市議会本会議での日本共産党代表質問(質問者は石川議員)の中から『川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案』についての部分を報告します。

『川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案』について

川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例案が提案されました。

本条例案は、第二章において、不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進を掲げ、第5条で、「人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害その他の事由を理由とする「不当な差別的取り扱いをしてはならない」と規定。第三章以降は、ヘイトスピーチ規制に関して規定しています。以下、条文に沿って質問していきます。

人権全般部分(第2章)-人種、国籍、性自認、性的指向、性別、障害などへの差別について-

 第5条は「不当な差別」の禁止ではなく、不当な「差別的取り扱い」の禁止と規定されています。

私たちは素案が発表されてから、当事者の皆さんの意見をお聴きするとともに、総務省、法務省、憲法学者や弁護士など法律の専門家から意見を伺ってきました。

憲法、障害者基本法、各地の条例などで「差別の禁止」が規定されている

9月議会でも議論したように、障害者分野では、すでに障害者基本法、障害者差別解消法があり、障害者基本法4条は「何人も障害者に対して障害を理由として差別すること」「その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とされ、障害者差別解消法8条は「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取り扱い」を禁止し、違反者には過料という罰則が課せられます(12条、26条)。

2006年に採択され日本も署名した「障がい者権利条約」では、障害に基づく差別とは、「合理的配慮の否定を含むあらゆる形態の差別」とされ、これを受けた禁止条例は全国30余りにものぼっています。全国で初めて制定した千葉県では、合理的配慮を欠くことを『差別』と規定しました。

障がい者差別解消法があるもとで条例が必要な理由として、九州弁護士会連合会は2017年10月「地方自治体に障害者差別禁止条例の制定を求める宣言」を行ない、条例を定める意義として、障がい者に対する差別を許さないとする地方自治体の強い意思を発信する効果があるとし、条例を定める必要性として、障がいのある人が障がいのない人と平等に暮らせる地域づくりを目指す基盤は地方自治体にあること、障がいのある人の権利を救済するシステムは地域の実情にあったより実効性のあるものでなければならないこと、障がい者差別解消法の付帯決議で、法で規定されていない事項を上乗せ・横出し的に定めることが容認され、自治体が地方の実情に応じた施策を定めることができるとされたことをあげています。9月議会で答弁されたように「既存の法の適用は阻害されない」という姿勢ではなく、川崎で障がい者差別を許さない内容の条例にすることが求められているのです。

そもそも、憲法第14条は「人種、信条、社会的身分により、……差別されない」と明確に宣言しているところです。先般、ご意見をお聴きした憲法学者は、「今回提案された人権条例案の不当な差別規定はまさに憲法第14条の地方政治の場あるいは公共団体との関係においてより具体化する規定とみることができる」とし、「現に行われている不当な差別行為に対しては、より実効的な禁止施策が採用されてもよいと考えるが、市民と事業者の努力義務および罰則なしの不当な差別的取扱いの禁止にとどまっている」「しかし、適正手続を踏まえた規制は容認されるのではないか」と指摘しておられました。実際、「国立市人権を尊重し多様性を認め合う平和なまちづくり基本条例」では、第3条において「何人も、人種、皮膚の色、民族、国籍、性別、性的指向、性自認、しょうがい…その他を理由とした差別を行なってはならない」と不当な差別禁止を明確に掲げています。

障害者・LGBT当事者の願いにこたえ「差別禁止」規定を

この間私たちがお聞きしてきた障がい者のみなさんの要望は、川崎市でも差別禁止、合理的配慮を掲げた条例を制定してほしいということでした。素案に対するパブコメにもこうした意見が寄せられています。LGBT、性的マイノリティの方からも、パブコメでも意見が出されていたように、明確な差別禁止規定を設けてほしいとの強い要望があります。LGBT法連合会-性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者に対する法整備のための全国連合会の案でも、第3条で明確な差別禁止を掲げています。実際、国立市は、「アウティングの禁止」を盛り込んだ条例も制定しています。「不当な差別的『取り扱い』」には含まれない、「合理的配慮を欠くことの禁止」「性的指向・性自認を他者が本人の意思に反して勝手に公表すること―アウティングの禁止」を盛り込んだ、明確な「差別禁止規定」を設けてほしい、当事者の方々のこの要望に応えないのでは、人権全般条例の存在意義が問われることになりませんか。

パブコメのときの論議では、禁止規定を設けない理由として「表現の自由」を上げましたが、以上の論議、憲法学者、国立市の条例などからしても、「表現の自由」が差別禁止規定を設けない理由にはならないと考えますが、伺います。

 禁止規定を設けてほしいというパブコメの意見に対して、パブコメの審議の際、市は禁止規定を置く「立法事実はない」との答弁でした。しかし、川崎市では、1977年の市バス乗車拒否事件があった後も障がい者に対する差別は長く障がい者の皆さんを苦しめてきました。そうした差別の中で、相模原やまゆり園事件のように命まで奪われる事態まで起きています。LGBTについても、衆院議員の「生産性がない」などの差別発言など差別・偏見で傷つけられる事態が後を絶ちません。一橋大学法科大学院生の事件のように、アウティングされることによって命を絶つ事例も起きています。

 私たちは多くの障がい者団体の皆さんから要望をお聞きしてきました。千葉県は条例制定にあたって、草案の検討過程で約1年をかけて関係団体などからヒアリングを行い、県内30か所以上でタウンミーティングを開催してきたとのことです。新潟県は当事者の皆さんの意見を2年間かけてお聴きしてきたとのことです。

また、LGBT当事者のみなさんからもご意見をお聴きしてきました。LGBT当事者の方たちは差別に傷付き、市内で私たちに会う時にも細心の注意を払われていましたが、勇気を出して会ってくださり、要望を寄せてくださいました。

条例制定にあたって、障がい者の皆さんやLGBT当事者の皆さんからの丁寧な聞き取りを行っていれば、川崎で差別禁止規定を設ける「立法事実」がないとは到底いえないはずです。川崎市でも禁止規定を設ける「立法事実」が存在することを認めるべきですが、伺います。

また、当事者の皆さん、憲法学者、弁護士、総務省・法務省などの意見を真摯に受け止め、本条例においても、明確に「差別禁止」を規定すべきだと考えますが、伺います。

「子どもの権利条例」「男女平等条例」など先進的な条例を妨げるものにならないか

「性別」「年齢」による不当な差別についてですが、「こどもの権利条例」「男女平等かわさき条例」などとの関係がどうなるのか、という点についてです。

「男女平等かわさき条例」には、「性別による差別的取り扱い」のみならず、「性的な言動により、相手の生活の環境を害する行為」をも禁止しています。人権条例案には「不当な」「差別的取り扱い」しか規定されていないことから、9月議会でその関係をただしたのに対し、骨子案の段階で明言されていた「上位法」ではないと否定。事前の調査で、それでは前法・後法の関係なのかと聞いたところ、「しいて言えば一般法・特別法の関係」と答えましたが、翌日、それも撤回されました。

そこで、改めて伺います。すでにある条例との関係はどのようなものなのか、明確にお答えください。

「ヘイトスピーチ規制部分」(第3章)について

第3章以降の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進、いわゆるヘイトスピーチ規制部分についてです。

2016年5月、差別を受けた当事者のみなさんをはじめ、広範な市民や各政党・会派も超党派で反対の声を上げるなど、世論の広がりを受けて「ヘイトスピーチ解消法」が成立したのに、その後も川崎でヘイトスピーチが繰り返されています。こうした事態のもとで、当事者の皆さんの思いはいかばかりだったでしょうか。その思いに心を寄せつつ、私たちはヘイトスピーチは許さないという立場で富士見公園のときも平和公園のときも川崎駅でも毎回、あらゆる場に立ってヘイトスピーチ反対の声をあげてきました。議会の中でもガイドラインの迷惑要件を外すことなどを求めてきました。私たちは、この間の当事者の皆さんをはじめ広範な市民の皆さんの運動が、今回の条例案の提案に結びついたことを心から歓迎するものです。

憲法(表現の自由・適正手続きの保障)の観点をふまえ「罰則もありうる」という立場で  

さて、本規定の検討に際しては、憲法21条「表現の自由」、憲法31条「適正手続の保障」の観点からの検討が必要です。憲法による表現の自由は「自己実現」と「自己統治」にとって不可欠な機能を担うことから、人権の体系上「優越的地位」にあり、その規制立法は厳格な基準に基づく審査、すなわち、①「やむにやまれぬ」理由に基づく②「必要最小限度の制限」であることが要求されます。規定が漠然・不明確な場合は違憲とされ(「明確性の基準」「漠然性ゆえに違憲無効」の理論」)、また、過度に広汎な規制の場合も違憲とされます(「過度の広汎性ゆえに違憲無効」の法理)。さらに刑罰を規定する場合は③規制対象となる行為とそれに違反した場合に科される罰則との間に均衡が図られていることが憲法31条の罪刑法定主義の観点から必要です。本条例もこうした観点から検討されなければなりません。

私たちは「罰則もありうる」が、罪刑法定主義から要請される構成要件の明確化をはかるという立場で臨んできました。そして、6月の文教委員会、9月議会で行ってきた議論の結果、私たちが指摘した「3回の違反行為の内容」「特定の国もしくは地域」「あおり」「侮蔑」などの用語、「手段」などについてそれぞれ、より明確化または限定化がされました。そのうえで何点か質問させていただきます。

緊急を要する場合で意見を聴くいとまがないときは「審査会」を開かなくてもよい?

勧告・命令・公表についてです。

私たちも求めた通り、1回目の違反・勧告の後、「公表・罰則」の前に「差別防止等審査会」の意見を聴くという項目も加わりました。しかし、「勧告」「命令」の前に、『緊急を要する場合で「差別防止対策等審査会」の意見を聴くいとまがないときはこの限りではない』との項目が加わりました。差別防止対策等審査会の意見を聞くとした趣旨は、憲法の保障する表現の自由を不当に侵害しないため、という答弁でした。 

しかし、ヘイトスピーチが行われる場合は、『緊急を要する場合で「差別防止対策等審査会」の意見を聴くいとまがないとき』と判断される場合が多いのではないかと考えられます。したがって、この要件が加わることにより、「差別防止対策等審査会」の意見を聴くことが原則だったのに、例外事例と判断される場合が多くなり、原則と例外が事実上逆転することになりはしないか危惧するものです。

そこで伺います。素案でもパブコメでも出ていなかったこの項目が入ったのはどういう理由か、また、「緊急を要する場合」とはどういう場合を想定しているのか、「緊急の場合」とは誰が判断するのか、伺います。

保護法益は?

保護法益についてです。

「差別を受けている者」のどのような具体的利益を保護するのか、すなわち、本条例の保護法益は何かとの問いに、パブコメの回答では「居住する地域において平穏に生活する権利」と答え、さらに文教委員会では「人格権」とも答えています。誰の権利かとの問いに、「集団を構成する自然人」とも答えています。「集団」なのか、集団を構成する「自然人」なのか、が問題です。人格権とは個人が持っている権利であり、平穏に生活する「権利」も個人が対象です。「集団を構成する自然人」という概念の重きが「集団」にあるとすれば、保護法益は個人的法益を超えた、いわば「社会的法益」ということになりませんか。刑法で社会的法益として保護法益とされているのは、騒乱罪、放火罪などの「公共の平穏」に対する罪、有価証券偽造罪などの「取引の平穏」に対する罪、などがあります。本条例の保護法益はこれらのどれに該当するものなのか、伺います。

告発は誰がするのか

23条の告発についてです。

23条で「市長の命令に違反したものは50万円以下の罰金に処する」とされます。

この告発について、パブコメでは「市長が行う」とありますが、刑事訴訟法239条2項では「官吏又は公吏はその職務を行うことにより、犯罪があると思料するときは告発しなければならない」とあり、義務的です。他方、1項は「何人でも犯罪があると思料するときは告発できる」とあり、誰でも告発できることになるとも考えられますが、こうした点を明確にするためにも条文に規定すべきだと思いますが、伺います。

再質問 人権全般に関しての規制部分(第2章)

川崎における障がい者差別やLGBT差別の深刻な実態とそれに対する差別根絶のための第1歩として市の条例で明確な「差別禁止」規定を設けてほしいとの切実な要望を紹介し、差別禁止規定を設けるべき立法事実があると認めるべきとの質問には答えませんでした。再度、答弁を求めます。 

 差別禁止規定を設けない理由の一つに挙げている憲法の「表現の自由」について、憲法学者が憲法14条の規定から問題ないとの意見、九州弁護士会連合会も差別禁止規定を設けるべきと提言していることなど法の専門家も推進の立場を表明していること、障がい者基本法も差別禁止規定を設けていること、国立市の条例など全国30以上もの自治体で「差別禁止規定」を設けていることなどから、禁止規定を設けないことの論拠として「表現の自由」が成り立たないことは明らかです。

さらに、差別的「言動」が含まれ得ることも理由にあげていますが、憲法は21条で「表現の自由」を保障している一方で、憲法14条で「不当な差別」を禁止していることからしても、「差別禁止」規定をもうけることと「表現の自由」を保障することは何の問題もありません。不当な差別的「取り扱い」には含まれないと考えられる「合理的配慮を欠くこと」を差別として禁止してほしい、LGBTについて「アウティングを禁止してほしい」との当事者の切実な思いに応えないのであれば、人権全般条例を定める意義が問われることになりませんか。論拠として成り立たない「不当な差別的言動」や「表現の自由」を持ち出すことはやめ、差別禁止規定を定め、障がい者・LGBTの方たちの思いに応える条例にすべきです。伺います。

既存の条例との関係

既存の条例との関係についてです。

既存の条例との関係について伺ったのに対し、上位法ではなく、既存条例の適用を阻害するものではないという答弁にとどまりました。前法・後法の関係か、一般法・特別法の関係か、また、それぞれの場合の法的効果について明確にお答えください。

ヘイトスピーチ規制部分(第3章以降)

第三章以降のヘイトスピーチ規制部分についてです。

「緊急を要する場合で差別防止対策等審査会の意見を聴くいとまがないとき」の「緊急を要する場合」とはどういう場合かと質問したのに対し、「『勧告』『命令』の対象となる行為が実施されることを把握してから実施されるまでの間に同審査会を開催できない場合」との答弁でした。これは何も答えないと同じです。こういうとらえ方では、同審査会の意見を聴く場合はほとんどないことになりませんか。ヘイトスピーチが行われたと判断した場合、緊急に審査会を開催すればいいだけの話ではありませんか。審査会の人数は5人とのことですから、緊急に開催することがそれほど困難とは思えません。伺います。

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