片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告)

「成績要件」をなくし、高校給付型奨学金制度の拡充を

2019年9月30日

9月26日の決算審査特別委員会(文教分科会)で教育委員会に質問した内容をご紹介いたします。

質問① 高校奨学金制度の利用者数は?

 次に、13款4項3目のうち高校奨学金制度について伺います。

 まずこの制度の2018年度の決算額と採用者数、また16、17年度の採用者数についても伺います。

答弁

高等学校奨学金についての御質問でございますが、平成30年度の決算額は5,736万7,000円となっております。

平成30年度の採用者数は、平成31年度の入学支度金で242人、年間の奨学金として支給する学年資金で750人、合計で992人となっております。

平成28年度の採用者数は、平成29年度の入学支度金で224人、学年資金で561人、合計で785人となっております。

また、平成29年度の採用者数は、平成30年度の入学支度金で218人、学年資金で779人、合計で997人となっております。

質問② どのような制度と関連しているのか

 この制度を利用するための成績要件の基準、所得要件の基準とその基準は他のどういった制度と関連付けて設定されているのか、伺います。

答弁②

申請基準についての御質問でございますが、成績要件につきましては、全科目を5段階評価として換算して扱い、平均で3.5以上としています。また、所得要件につきましては、生活保護法による保護基準の規定を基に算定した基準額以下としております。

質問③ 就学援助利用者(中学まで)と、高校奨学金の利用者は?

 次に、市立中学校3年の全生徒数と就学援助利用者数とその割合、市立高校1年の全生徒数と高校奨学金の利用者数とその割合を、それぞれお示しください。また、川崎市立中学校の生徒の高校進学率についても伺います。

答弁③

認定率等についての御質問でございますが、平成30年度の川崎市立中学校3年生の生徒数は5月1日時点で9700人、就学援助認定者数は3月31日時点で1194人、割合としましては約12.3%となっております。

また、川崎市立高等学校1年生の生徒数は5月1日時点で1486人、高等学校奨学金学年資金採用者数は,3月31日時点で38人、割合としましては約2.6%となっております。

また、市立中学校卒業者の高等学校等への進学状況については、平成29年度卒業者で約99パーセントとなっております。

質問④ 高校生のいる世帯の家計負担は3年間でどのくらい?

 奨学金制度は、就学援助制度と同様に生活保護基準に準じて支給するものですが、高校には99%の生徒が進学するものの、就学援助利用者の約8割程度の方が高校では奨学金は受けられないということです。なぜそうなるのか。平均評定「3.5」の成績要件があることにより、不登校の生徒はじめ多くの生徒がそもそも利用できないからです。

 それでは、高校生を持つ家庭の家計負担はどうか。市立高校の普通科で3年間にかかる授業料・生徒会費・PTA会費、教科書代・制服代・修学旅行の費用などはどのくらいか、市立5校の平均的な額を伺います。

答弁④

各家庭の3年間の費用負担についての御質問でございますが、授業料の総額は、全校一律で356,400円でございます。

生徒会費やPTA会費等の総額は、平均で約175,000円でございます。この他に、各ご家庭で負担していただくものとして、制服や体操服等の代金が平均で約68,000円、修学旅行の費用が平均で,約115,000円でございます。

また、教科書代につきましては、選択科目等により異なりますが、おおよそ3万円から7万円でございます。

高校に必要な費用

質問⑤ 「3年間で70万円」の負担軽減のために、高校奨学金の拡充を

 教科書代は幅があるものの、低く見積もっても3年間で約70万円ほどの費用がかかるとのことでした。

加えて部活などの費用負担もあります。サッカー部の高校1年生を持つ親御さんに伺いましたが、ユニフォームとジャージで10万円、シューズで1万円、合宿で3万円、遠征など交通費に月5千円、年間合計20万円はかかり、きょうだいもいるので本当に大変だとのことでした。

就学支援金制度により年収約910万円までの世帯では授業料はかかりませんが、それを差し引いても3年で40万円近く、また部活動の費用まで加えると大変な負担です。就学援助制度を利用していたのに、高校奨学金は利用できないという世帯はさらに深刻です。

2年前の「子ども・若者生活調査」の結果を受けた「子どもの貧困対策の基本的な考え方」では、子どもの貧困対策に必要な視点として「子ども・若者の成長の過程のいずれの段階においても、漏れのない、また、切れ目のない、教育・福祉・保健・医療・雇用などの分野が連動した重層的な支援」が重要とし、そのためには「『社会的相続』を補完し、子どもたち自身の『自立する力』の獲得を支援していく視点を持って、既存の制度・施策の底上げを図っていくことが重要です」と結論付けています。

この結論からみても、小学校・中学校までの「就学援助」と高校での奨学金制度は、「切れ目」もあるし、不登校や成績要件を満たさない生徒には利用できないという「漏れ」もあるではないですか。

 京都市は実質的には成績要件は問わず、相模原市も成績要件のない給付奨学金制度としています。さらに、旭川市も300人を対象に「成績は不問」「所得割額の少ない順に選考する」という給付型奨学金制度を検討しています。本市も、高校奨学金制度の成績要件を撤廃するか緩和するなどして対象を広げること、予算の枠を広げて収入要件自体も改めて、より多くの高校生に支給することがどうしても必要と考えますが、教育次長に伺います。

答弁⑤

成績要件等についての御質問でございますが、本制度は、能力があるにもかかわらず、経済的な理由のため修学が困難な者に対して、奨学金を支給することを目的としています。能力があることについては、一定の成績要件を基準に判断しているところでございます。

また、経済的に困窮していることについては、生活保護の基準を採用して判断しているところでございます。

現行制度の本来の趣旨に照らしましても、一定の要件の設定は必要であると考えているところでございますので、今後につきましても現在の制度を適切に運用してまいりたいと考えております。

質問⑥ 子どもの貧困対策の「漏れ・切れ目のない支援」「既存制度の底上げ」をどう具体化するのか

 教育長に伺います。「『子ども・若者生活調査』分析結果報告書」を見れば、本市でも家計のせいで教育を受ける機会が奪われている実態は明らかです。

不登校の経験のある子どもは、4人家族で485万円を超える可処分所得の「分類Ⅴ・Ⅵ」の階層では2.6%ですが、同じく245万円を超え485万円未満の「分類Ⅲ・Ⅳ」では6.8%、245万円未満の「分類Ⅰ・Ⅱ」では5.6%。

相対的に低所得の分類ⅠからⅣでは、所得の高い層に比べ、不登校は二倍以上の出現率です。中学校で不登校の場合は当然、成績要件を満たすことはできず高校奨学金制度を利用できません。

 『進学断念』の項目でも同様です。所得の低い「分類Ⅰ・Ⅱ」では「経済的な理由で進学を諦めたことがある」が7.3%、「経済的な理由で中退した」が1.8%、「その可能性がある」が40.9%、半数に影響が及んでいます。可処分所得485万円までの「分類Ⅲ・Ⅳ」でも合計約27%が「進学を諦めた」「その可能性がある」と答えています。この項目の設問では高校も対象に含んでいます。「社会的な相続」「貧困の連鎖」が、進学断念という形で表れているのは明らかです。

高校奨学金はここに手当てできる制度です。この調査結果をもとに導き出された結論である「既存制度の底上げ」をすることこそ必要です。

 他都市ではそれぞれ、経済的に厳しい世帯を支援する制度を行っています。市の公的な調査の結果示された「子ども・若者の成長の過程で漏れ・切れ目のない支援をする」こと、「『社会的相続』を補完し、既存の制度・施策の底上げを図ること」という方向性を、どのように教育委員会として具体化をはかるのか、また、高校奨学金制度について今後どのように拡充していくのか、教育長に伺います。

答弁⑥

高等学校奨学金制度についての御質問でございますが、経済的に困窮している家庭に対しましては、就学援助制度をはじめ、様々な施策により、切れ目のない支援を行うことが重要であると考えております。

また、高等学校奨学金制度につきましては、現行制度の本来の趣旨に照らしま.して、一定の要件の設定は必要であると考えているところでございます。今後につきましても、国の動向を注視しながら、現在の制度を適切に運用してまいりたいと考えております。

意見・要望 「子どもの貧困対策の基本的考え方」で示した「既存制度の底上げ」の具体的な検討を

同じ所得要件なのに、就学援助利用者の8割程度が高校奨学金は利用できないという実態、高校生を持つ世帯の費用負担の実態を指摘、「切れ目」や「漏れ」もあることを指摘して拡充を求めましたが、「現在の制度を適切に運用する」との答弁でした。

「子どもの貧困対策の基本的な考え方」で、就学援助制度と奨学金制度もあげて「生活困窮に関連する幅広い…制度を充実させる」とし「既存制度の底上げが必要」と提起してから2年経ちます。本当に「現在の制度を適切に運用する」と言い続けているだけでいいのでしょうか。

この「考え方」のなかで「こどもの貧困対策の推進にあたっては『こども施策庁内推進本部会議』の仕組みを活用し、関係局が十分に協議・検討を重ねる」とも述べています。教育委員会からも、この推進本部会議に「既存制度の底上げ」を具体化するための議題を提案し検討することを要望して質問を終わります。

片柳すすむ

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