片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党川崎市議会議員
議会活動報告

人権条例素案―構成要件の明確化、障害者差別解消法とのくいちがいなどの課題解決を

2019年9月15日

先日9月11日に川崎市議会本会議行った日本共産党代表質問(質問者は大庭裕子市議副団長)のうち、人権条例素案にかかわる部分の質問と答弁です。          

大庭裕子市議の代表質問

人権条例素案についてです。ヘイトスピーチ規制部分についてです。川崎市ではヘイトスピーチが繰り返される中でヘイトスピーチを許さない市民のみなさんによる運動が粘り強く取り組まれてきました。こうした中でヘイトスピーチをする人々を包囲する運動が大きく広がっています。私たちも2014年から皆さんたちと連携しながら一緒に取り組んできたところです。ヘイトスピーチは断じて許すことのできないものであり、こうした粘り強い運動・要請に応え、川崎市が今回、条例提案を行なったことは、皆さんの運動の成果であり、私たちも歓迎するものです。 

憲法31条に基づいた構成要件の明確化-「あおり」「侮蔑」などあいまいな用語などの規定を改めたのか

さて、本条例では地方自治体の条例でははじめて罰則が設けられることになります。罰則を付すには憲法31条の「罪刑法定主義」よりどういう場合に罰せられるのか構成要件が明確でなければなりません。そこで構成要件の明確性について何点か伺います。

本素案は「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の禁止」を明記し、違反者には「50万円以下の罰金に処する」と罰則が科される内容となっています。

国会審議でも「不当な」「差別的」などの用語のあいまいさが指摘された

罰金を科される構成要件たる「本邦外出身者に対する『不当な差別的言動』」の定義について市は「法による」としています。ヘイトスピーチ解消法第2条に定義する「不当な差別的言動」の文言について、国会審議でわが党の仁比議員が紹介したように、国連人権理事会特別報告者デビッド・ケイ氏が「ヘイトスピーチの定義が曖昧なまま規制すれば表現の自由に悪影響を及ぼす可能性がある」、獨協大学右崎正博教授も「『不当な差別的言動』という言葉は曖昧であり、言論と行為を区別すべきだ」と指摘しています。審議の中でも「不当な」という概念が評価も含めて広範、曖昧ではないか、「差別的」という表現、用語が曖昧ではないかと懸念が示されたところです。

6月24日の文教委員会審議でも私たちは「不当な」「差別的言動」について、また、類型として示されている『あおり』『著しく侮蔑』などの文言についても曖昧さを指摘して明確化を求めました。

弁護士からも「あおり」「侮蔑」などの明確化・限定化が必要、との意見が

この点については、神奈川弁護士会の弁護士らが、本条例に罰則規定を設けることが許容されるとしても、その刑罰規定の内容が憲法に違反してはならない。憲法は31条以下で適正手続を保障しており、刑罰は適正に定められることが必要であり、手続及び犯罪構成要件が明確でなければならないし、刑罰の対象となる行為は限定されなければならない。こうした点について本件条例素案には懸念される部分が散見されるという意見を出しています。この中で「保護法益」「3回の違反行為の内容」「行政不服審査等との関係」や、「特定の国もしくは地域」「あおり」「侮蔑」などの用語、「手段」などについて、より明確化または限定化が必要としているのは重要です。

「『あおり』という概念は不明確であるため具体的にどのような行為を指すのかより明確化することが必要」、「『侮蔑』という用語は刑法上の侮辱罪の場合と異なり、法律上明確ではなく、広く解釈することが可能であり、『著しく』という限定があるとしても、処罰されるべき法益侵害行為を超えた過度に広範な規制であるという懸念があるため、対象行為を限定すべく、より明確な定めとすべき」とされています。

また、『多数の者が一斉に大声で連呼する』という手段の類型について、『多数』『一斉に』『大声』という要件の認定においては主観的評価が求められるため、明確性に欠ける傾向を否定できない。具体的にどのような行為がこの『手段』に該当するのか、より明確にする必要がある、などとされています。

これらの点は、罪刑法定主義の趣旨による構成要件として明確化すべきだと指摘してきた私たちの主張と同じものです。これらの指摘を受け、その後、どのように検討したのか、結果について伺います。

障害者差別解消法は「過料」、本条例素案は「罰則なし」-法律と異なる規定ができるのか

人権「全般」条例という点についてです。

 今回の条例は人権「全般」条例であり、障害者、女性、こども、LGBTなどについても規定しています。これらについて禁止されるのは、不当な「差別的取り扱い」です。つまり、不当な「差別的言動」はこれらの場合には禁止されず、例えば、障害を理由にバイトの時給を健常者よりも安くするなどの不当な「差別的取り扱い」をした場合でなければ禁止されないし、禁止される場合でも罰則の適用はありません。1つの条例で規定内容や効果の異なる制定をするのは他都市には例があるのか伺います。

障害者差別解消法は「過料」なのに、本条例素案は「罰則なし」

 障害者分野では、すでに障害者基本法、障害者差別解消法があり、障害者基本法4条は「何人も障害者に対して障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」とし、障害者差別解消法8条は「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取り扱い」を禁止し、違反者には12条、26条により過料という罰則が課せられます。

先日、総務省法務省からレクチャーを受けてきました。総務省の担当者は、同じような文言の条例が制定される場合には法の趣旨を薄めてはならず、とりわけ法に定めた罰則等を条例から外す場合は法律違反となると明言しました。本条例素案は法と明らかな齟齬が見られますが、総務省の判断を仰いだものなのか、伺います。

障がい者部分では、障害者差別解消法が2016年にできて3年も経つのに、津久井やまゆり園事件や参議院で障がいをお持ちの国会議員が当選し、その活動を保障する取り組みに対する差別的言動の数々をみるとき、川崎市でも差別禁止、合理的配慮を掲げた条例の必要性について強く思いをいたすところです。実際、障害者団体の方からは個別の条例を作ってほしいという切実な願いが繰り返し寄せられてきたところです。それでも、差別禁止について法と異なる規定をした理由について伺います。

また、LGBTでいえば、野党が国会に出している法案には明確な禁止規定がつけられています。杉田水脈衆院議員の差別発言や、2015年4月に一橋大学法科大学院においてゲイであることをアウティングされた学生が投身自殺した事件など、いまだ差別の中で生きづらさを抱えていらっしゃる方々が多くいます。LGBTの方の中で同性愛者の自殺者は異性愛者の6倍にものぼるという報告書もあり、LGBT差別解消法、条例制定の要求は切実なものがあります。

この点で、「『差別のない人権尊重まちづくり条例』としながら、罰則をもって禁止する差別と罰則のない差別を一つの条例の中で規定することに無理がある」と指摘する法律家の意見についてどのように考えるのか、伺います。

男女平等かわさき条例「性的な言動により、相手の生活の環境を害する行為の禁止」は『上書き』されてしまわないか

すでにある市条例との関係についてです。

3点目の問題は、すでに川崎市に存在している「こどもの権利条例」「男女平等かわさき条例」などとの関係です。男女平等かわさき条例には、“男女平等にかかわる人権侵害の禁止”項目が規定されており、その中では、「性別による差別的取り扱い」のみならず、「性的な言動により、相手の生活の環境を害する行為」をも禁止しています。しかし、素案には「不当な」「差別的取り扱い」しか規定されていません。人権条例はこれらの上位法となると説明されていますが、そうすると、男女平等に関する差別の禁止は「性的な言動により、相手の生活の環境を害する行為」には及ばないことになるのか、そのような判断をしたのは何故か、伺います。

市民文化局長の答弁

(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例(素案)についての御質問でございますが、はじめに、構成要件につきましては、パブリックコメント手続でお寄せいただいた御意見も踏まえながら、引き続き、その明確化が図られるよう、検討を進めてまいります。

次に、条例につきましては、法令に違反しない限りにおいて制定するなど、関係法令を踏まえる必要がありますが、条例(素案)でお示しした、今般の条例の構成は否定されるものではないと判断しております。

次に、既存の法律との関係についてでございますが、今般の条例につきましては、既存の法律の適用を阻害するものではないことから、懸念されている状況にはないものと判断しております。

次に、障害者に係る差別禁止につきましては、今般の条例に、既に適用されている法律と同じ規定を設ける必要はないものと判断しております。

次に、「罰則規定」の置き方についてでございますが、今般の条例につきましては、様々な御意見があることを認識しており、参考にさせていただいております。

次に、「男女平等かわさき条伊1」など既存の条例との関係についてでございますが、今般の条例につきましては、既存の条例の上位の条例として位置付けるものではなく、既存の条例の適用を阻害するものではないことから、懸念されている状況にはないものと判断しております。

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