片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党川崎市議会議員
議会活動報告

川崎市「差別のない人権尊重のまちづくり条例(素案)」―文教委員会での審議

2019年8月2日

6月24日の川崎市議会文教委員会で、「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(素案)についての審議が行われました。このときの審議の様子に一部その後の調査などで分かった点を加えて報告します。(この報告内容のうち、市の担当者の答弁の部分は当日の私と勝又議員のメモに基づくものです。議事録は後日市議会が作成しますのでそちらをご参照ください)

川崎市の「条例素案」はこちらのページからご覧ください⇒ http://www.city.kawasaki.jp/250/page/0000108168.html

2013年以降繰り返し「祖国に帰れ」「死ね・殺せ」と特定の民族を罵るヘイトスピーチが、川崎市内で繰り返されてきました。
差別を受けた当事者のみなさんをはじめ、広範な市民や各政党・会派も超党派で反対の声を上げるなど、世論の広がりを受けて2016年5月に「ヘイトスピーチ解消法」が成立しました。その直後に川崎市内でヘイトデモを繰り返し主催してきた男性が主催したデモへの公園の使用許可申請に対し、市議会は全会一致で使用を許可しないように市長に求める申し入れを行い、それを受けて都市公園条例に基づき公園使用不許可を市長が決断しました。
また、この不許可処分を受けて川崎市人権施策推進協議会がガイドラインや人権全般条例の制定を求める報告書を提出。ガイドラインに続いて、今回の条例素案が提案されることになりました。

「ヘイトスピーチを許さない」「ヘイトスピーチ根絶を」という一致点で当事者のみなさんと市民が共同してとりくんできた運動が、川崎市を動かしガイドラインや条例の制定へと足を踏み出させました。このことをヘイトスピーチが危惧される現場に立ち続け「ヘイトスピーチは許さない」と声を上げてきた一員として嬉しく思います。

日本共産党市議団はどんな態度で臨んだのか

はじめに、私たちがどんな態度でこの審議に臨むのか、を発言しました。

・私たちは元よりヘイトスピーチが危惧される現場に立ち続け、ヘイトスピーチは許されないと声を上げ続け、広く市民にその実態を知らせてきた。
・条例素案は、ヘイトスピーチ解消法からさらに踏み込むもので、言論にかかわるものであり、市民の自由に対しても様々な影響が及ぼしかねないと指摘する法律関係者なども多く、厳密・慎重に審議しなくてはならず、この点から細かく質疑させていただく。
・条例素案についてはこれまでの経過でも市長などの説明でも「実効性」がキーワードとされてきた。この点でも、この条例素案が本当に実効性のあるものとなっているのかについても詳細に検討されるべきと思う。これらの理由から、素案について逐一質疑して検討させていただきたい。

大きくは以下の3点について質疑を行いました

① 障害者、SOGI(LGBTs・性的マイノリティ)、性別などを理由にした差別の場合は「不当な差別的取扱いの禁止」とされ、「言動」については禁止をせず罰則も設けていない。一方で「本邦外出身者への不当な差別的言動」については「禁止」とし罰則も設けている。一つの条例の中で「人権全般」と「本邦外出身者」での違いがあるが矛盾しないのか。

② 憲法で、犯罪の構成要件は、誰がどう読んでもわかるように条文で一義的に明確にされていなければならない(罪刑法定主義)とされている。この条例では「50万円以下の罰金」という罰則が設定されているが、「何をどうすれば犯罪となるのか」という構成要件が明確になっていない。この構成要件があいまいなままでは「実効性」は担保できない。また権力により濫用されるおそれを残すことになる。

③ 条例素案の元となっているヘイトスピーチ解消法は、罰則などの規定を持たない「理念法」だが、それに「上乗せ」して罰則規定を設けることができるのか

この3点を柱に報告します(便宜上このブログでの掲載順に質問番号を振っていますが、実際の質問順とは異なります)。

障害・LGBTなど「人権全般」部分について

3 人権全般

〇質問①
3「不当な差別のない人権尊重のまちづくりの推進」(3)不当な差別的取り扱いの禁止 については、「骨子案」のときには「不当な差別の禁止」とされていたが、「不当な差別的取扱いの禁止」という規定に改められた。どういう意図があるのか
●答弁①
骨子案の当初は「不当な差別の禁止」としていたが、厳密に考えると「取扱い」と「言動」を分ける必要があるとの結論に至った。ここで規定する様々な差別に「言動」まで含めて禁止することになれば、言論の自由への重大な挑戦となってしまうので、配慮して「取扱い」とした。

類型・手段

〇質問②
4「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進」の(2)「類型」「手段」では「日本から出ていけ」とか「虫に例えるような侮蔑」「声明に危害を加えるような発言」を拡声器やプラカードなどを使って行うことは『禁止』とされる。
しかし、例えば障がい者やLGBTの方々に対して、「日本から出ていけ」などの言動が、拡声器やプラカードで行われたとしても「言動」であって「取扱い」ではないから、ここの禁止規定からは除外されるということか。
また、禁止されるのは「取扱い」―つまり「障がい者や性的マイノリティの方々の時給を、障害や性自認・性的指向などを理由にそれ以外の人より低くした」―などの不当な取扱いがあってはじめて禁止されるということか?
●答弁②
障がい者やLGBTへの差別があってはならないのは当然のことだが、ヘイトスピーチは本市において立法事実があるから特別に対象としている。

〇質問③
同じように「虫に例えるような侮辱的発言」だとか「生命に危害を加えるような発言」で侮蔑されたとしても、禁止される人と禁止されない人が同一の条例の中に出てくるということになるが、そういう理解でいいのか。そういう規定をしている条例が他都市にあるか。
●答弁③
(本邦外出身者に対する)ヘイトスピーチには立法事実がある。障がい者などでは立法事実がないわけではないが、そこまでの差別ではない。 (他都市に例があるかについては答えず)

〇意見
「(本邦外出身者に対する)ヘイトスピーチには立法事実がある」というが、「障がい者差別禁止条例をつくってほしい」という障害当事者・市民も多い。そのことが「障がい者に対する差別」という立法事実もあるということを示している。この構成の仕方にはそうした矛盾がある。

*委員会では述べなかったこと

この「人権条例」は、これまで川崎市の制定してきた人権にかかわる諸条例(「川崎市子どもの権利に関する条例」「男女平等かわさき条例」など)に対する「上位条例」となる。
例えば「男女平等かわさき条例」は、「何人も、あらゆる場において、性別による差別的取り扱い、性的な言動に対する相手の対応により当該相手に不利益を与え、又は性的な言動により相手の生活の環境を害する行為、配偶者等に対する著しい身体的または精神的苦痛を与える暴力的行為等の男女平等にかかわる人権の侵害を行ってはならない。(第6条)」としているが、これらの条例の内容や趣旨が薄められるのではないか、と危惧される。

罰則に関する構成要件について

〇意見
これ以降はもっとも肝になる部分で、罰則にかかる規定となるが、「罪刑法定主義」と言われ、法律では「これに当てはまれば自分は罰せられる」ということが厳格に・一義的に明らかにされなければならないとされている。そのためさらに詳細に逐一伺っていく。

4 本邦外出身者~

類型・手段

〇質問④
4(2)「何人も、市の区域内の道路、公園、広場、駅その他の公共の場所において~(不当な差別的言動を)してはならない」としているが、「その他の公共の場所」とはどういうことか。「室内」は入るのか。「市の施設の室内」などは入るのか。
●答弁④
基本的には「室内」は「その他の公共の場所」には入らないが、建物内でも「何人も入れるオープンな場所」は入ると考える。同じオープンな建物内でも「貸し切り」の場合は入らない。

〇質問⑤
同じ4(2)の『類型』にある「退去させる」「あおる」「告知する」とは、それぞれどういう定義か。
●答弁⑤
「退去」=「日本から出ていけ」などという行為。「あおる」=周りの人に煽り立てる行為。「告知する」=被害者に危害を及ぼすことを告知する行為。

〇質問⑥
「多数」とは何人以上か、「一斉に」「大声で」「連呼する」の概念はどういうものか
●答弁⑥
「多数」=2~3人以上。「一斉に」「大声で」「連呼する」=今後考える。個別・具体的に考える。

〇質問⑦
「個別具体的に判断する」というのはダメだ。犯罪とされる行為の内容、及びそれに対して科される刑罰を一義的に明らかしなければならないという「罪刑法定主義」の立場から考えてありえない。
●答弁⑦
申し訳ありませんでした。法例を調べて今後明らかにしたい。

〇質問⑧
4(2)「類型」と「手段」の関係について。「次に該当する」といって囲みの中の「類型」「手段」をしめしているが、「類型」のどちらかにあてはまり、かつ「手段」のいずれかにあてはまる、と理解してよいのか。この文章・囲みだけでは定かではないがどういう定義か。
●答弁⑧
いずれか一つにあてはまれば当てはまると考える

チャート

〇質問⑨
4(3)勧告・命令・公表のチャートについて、勧告・命令のところで「1回目と同様」「2回目までと同様」の違反行為があった場合に次の段階に進むとされているが、「同様」とはどういうことか。
例えば、1回目に「アメリカ人は出ていけ」と「拡声器」を使い、侮蔑したものが勧告を受け、2回目は「韓国人を虫に例える」ような侮蔑をした「ビラやパンフを配布」した場合には「同様」となるのか。「類型」が同じで、かつ、「手段」も同じ場合を「同様」というのか、それとも別の場合なのか、「同様」とはどういうことか明確にしてほしい。
●答弁⑨
「1回目はアメリカ人、2回目は韓国人」の場合は「同様」ではないと考える。

〇質問⑩
「類型」「手段」も複数ある。「拡声器+プラカード」「拡声器+びら」は「同様」となるのか?
●答弁⑩
関係法規などに基づき今後明らかにしたい

〇質問⑪
とくに「2回目」の違反を判断するためには記録が必要だが、記録し保管するのは誰なのか、場所・部署はどこなのか。どれくらいの期間保管するのか。違反の事実の調査はだれがするのか。
●答弁⑪
市民文化局だ

〇質問⑫
「勧告」「命令」の有効期間はどのくらいか。東京弁護士会の「モデル条例」は10年としていたが。
●答弁⑫
設定はしていない。法制局等とも相談し今後検討する

理念法に対し「罰則規定を持つ上乗せ条例」は可能か

〇質問⑬
ヘイトスピーチ解消法は、禁止規定もなく罰則も設けていない。法律が定めていないのに条例で罰則を定めることができる根拠はどこにあるのか。大阪市の地方公務員の政治活動規制についての条例案に対し、総務省から「法律で罰則を付さないのに条例で罰則を設けるのは法律違反」という趣旨の見解(国会答弁)が出されていたと思うが、今回の人権条例がこの点をクリアできる理由は何か? 
●答弁⑬
解消法は理念法だが、制裁のための行政刑罰にする。明確な差別の意図を持つものには「教育・啓発」では通じない。繰り返すものには罰則が必要。解消法の「本邦外」ではなく「特定国」と限定した。運用も慎重にする。行政刑罰の判断も検察・警察の2重チェックができ、表現の自由への配慮ができる。「違憲」との指摘を受けることもない。立法事実があり、条例は「上乗せ」として規制ができると考える。

〇質問⑭
総務省など担当省庁には確認したのか
●答弁⑭
していない

〇質問⑮
大阪市が地方公務員法36条に関して、法律に定めのない地方公務員への罰則を設けようとした例をあげたが、国会で「(この場合に)地方公共団体の条例で罰則を定めることは法律上許されるか」という質問に対し、「同法は地方公務員の政治的行為の制限については罰則を付すべきではないとの趣旨であると解され、条例で罰則を設けることは法律に違反し許容されない」と答弁されている。「上乗せ条例を制定できる」と市は言うが、法律が「罰則を付すべきではない」としている場合には、罰則はできない、という答弁だ。ここはクリアできると考えているか。
●答弁⑮
クリアできる。立法事実があり上乗せできる。

〇質問⑯
大阪は条例制定の際に総務省に照会・確認している。同様に担当省庁に確認すべきではないのか。
●答弁⑯
解消法で「地域の実情に応じて」としているので上乗せを許容していると考える。一義的には検察庁と協議する。法務省に直接行くのはおかしい。

*最後に

詳細に逐一質問させていただいたが、「類型」と「手段」の関係や、告発の手続きなど、今回の資料だけでは明確に規定されていないことも多く、「今後検討していきたい」という答弁もいくつかあった。きわめて重要な案件なので引き続き慎重に検討していきたいと思う。質問を終わる。

*その他の質問と答弁

□Q:資料1で「ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する」条例とされているが、ここに対応するのはどの部分か
■A:ヘイトスピーチは「差別意識」が根底にあるため、その意識に働きかけるためには教育・啓発が必要だ。資料3(5)の部分がそれにあたる

□Q:2「総則」(2)定義について、「人種」「国籍」「民族」とあるがどういう定義か
■A:憲法、児童の権利条例、人権イニシアチブなどの定義の通りだ。人種は「日本人」「朝鮮人」など、国籍・民族もそのままの定義だ。

□Q:「出身」はどういう定義で、部落差別を含むのか
■A:そうだ

□Q:4(3)のチャート・「前記(2)に違反」→違反か否かを判断するにあたり、録音・録画などの証拠がある場合を想定しているということか
■A:そうだ
□Q:違反の判断は市長もしくは市の職員がするということか。
■A:そうだ。審査会の意見を聞いて判断する。

□Q:「勧告・命令」の前には「審査会」の意見を聞く、という規定があるが、(6)を見ても公表・罰則の前に「意見を聞く」という規定がない。ここだけは意見を聞かなくてよいということか。なぜ違うのか。
■A:罰則の段階では司法機関の扱いとなるからだ。
□Q:「公表」は市が行政機関として判断するが、その際には「審査会」の意見を聞かなくていいのか
■A:意見表明などの機会を与える規定になっている
□Q:それでも「意見を聞く」とはなっていないが、必要があれば開くことはできるのか
■A:それは可能だ

□Q:公表の部分で「団体の代表者等」となっているが「等」とはどういう意味か
■A:代表者または管理者、ということだ

□Q:「不当な差別的言動が行われるおそれ」とはどのような概念か
■A:ガイドラインのとおりだ

□Q:4(5)インターネット表現活動…(ア)について。拡散防止のために必要な措置、とは?具体的には?市が削除要請することは含まれないのか。
■A:含まれる
□Q:(イ)について。表現内容自体を公表すると2次被害になるような場合を想定しているということか
■A:そうだ

□Q:5「罰則など」(1)アについて。「違反」したと認められるとの判断、勧告・命令に従わなかったとの判断の判断材料は、市が事前につかんで録音録画したものに限るのか?市民の提供したものは含まないのか?
■A:事後のものではなく事前のものに限る

□Q:「違反したと認められるもの」「勧告命令に従わなかったと認められるもの」に「報告を求めることができる」とされているが、求められた側には、報告義務があるのか。
■A:報告義務はあるが罰則を受けるものではない
□Q:「その職員」とは誰か、「関係者」とは、たとえば動画を撮影した市民なども含まれるのか
■A:「職員」は市民文化局はじめ市の職員など。「関係者」は類するもの。関係してくる人たち。
□Q:「質問させることができる」とされているが、その質問された相手には黙秘権はあるのか、「あなたには黙秘権があります」との通告はされるのか
■A:検討していく

□Q:「犯罪捜査のために~解釈してはならない」との意味は
■A:メモ追いつかず?

□Q:「命令に違反した者」―のところで「法人等」となっているが、その概念は? 法人として登録していない「権利能力なき社団」も含むのか。 
■A:含む

□Q:罰則を受けるのは、法人の代表者なのか、役員も含むのか、あるいは単なる従業員や構成員等も含むのか。 
■A:従業員・構成員は含まない

□Q:両罰規定で権利能力なき社団が「法人等」として罰則を受ける場合に、一般の構成員・従業員なども罰則を受ける対象となるのか?
■A:ならない

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