片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党前川崎市議会議員
市議会傍聴レポート(議会活動報告) 活動レポート

支所のあり方は幅広い川崎区民の参加で検討を(6月議会一般質問)

2019年6月30日

6月28日の一般質問で、市の「大師支所・田島支所の区役所への統合も含めた『考え方』」について取り上げました。

質問は以下の通りです。

支所を利用している区民(高齢者・障がい者含め)の負担は?

支所を含めた川崎区全体の機能・体制の検討における考え方について、伺ってまいります。

支所の機能を区役所に集約することまで含めた検討をするとのことですが、そうなれば、支所には歩いて行けた利用者・住民が、区役所にはバスでなければ行けなくなる、ということも起こります。殿町3丁目の場合を例にとれば、現在は大師支所までバスで15分で行けるが、区役所となると27分かかる、などということになります。

また、福祉事務所では高齢者・障がい者にかかわる業務を取り扱っています。高齢者や障がい者にとっては、区役所に窓口が変更されれば、タクシーで行かざるを得ない人も生まれることになり、交通費ふくめ市民の負担はさらに大きくなります。

支所利用者の経路や移動距離・移動手段がどのように変化するのか、費用負担や負担感はどうなるのか、などの調査はすでに行っているのでしょうか。あるいは今後行うのでしょうか、市民文化局長に伺います。高齢者・障がい者も含めた利用者・区民の負担をどのように考えているのかについても伺います。

市民文化局長の答弁

支所を含めた川崎区全体の機能・体制の検討についての御質問でございますが、今回公表した「検討における考え方」では、川崎区が抱える困難な課題や所管区域をまたがることで生じる課題等に的確に対応できるようにするため、川崎区役所や支所の機能・体制について検討することをお示ししたところでございます。

支所管内の各町丁から区役所及び支所までの所要時間につきましては、試算を行っておりますが、今後、高齢者や障害者も含めた利用者・区民の負担も含め、支所機能を区役所に集約した場合に生じる課題や効果を整理し、現状の川崎区が抱える課題の解消に向けて、総合的に検討してまいりたいと考えております。

生活保護制度(ケースワーク)における訪問活動の役割は

次に、支所のあり方に関連して、生活保護制度における訪問活動の意義について健康福祉局長にうかがいます。

「支所を含めた川崎区全体の機能・体制の検討における考え方」の中で、大師・田島福祉事務所を川崎区役所・福祉事務所に集約することも含めて検討しているとのことでした。実際にこのことが実施されたら、現在田島・大師福祉事務所を起点に行われている生活保護制度の家庭訪問や面接・相談などの機能、ケースワーク機能が大きく後退することが危惧されます。

公的扶助ケースワークの意義と果たしている役割はどういうところにあるのか、その中でも特に家庭訪問活動の果たす役割はどういうものか、伺います。

健康福祉局長の答弁

生活保護制度についての御質問でございますが、ケースワークにつきましては、生活保護制度の大きな目的である最低生活の保障と自立の助長を実現するため、主体的な生活ができるよう支援していくことが大切であり、個々の状況を理解し、一人一人に寄り添いながら相談援助を行っていくことが重要であると考えております。

特に、訪問調査につきましては、家庭を訪問することにより、生活実態や抱えている課題、さらには、人間関係など周囲の状況等を積極的に把握するために欠かせない、ケースワークの基本となる活動であり、制度を適切に実施していくための重要な役割を担っていると認識しております。

生活保護制度のケースワーク機能・支援の質の確保ができるのか

憲法25条に示された最低生活の保障と自立助長を実現するのがケースワークの役割であり、そのなかでも訪問調査は、生活実態を把握する基本的で重要な役割をもっているとの答弁でした。

生活保護制度を必要とされている方は、単身高齢者、ひとり親世帯、アルコール依存などの精神疾患、社会的孤立などなど、健康、生活、家族問題が重複している場合が少なくありません。訪問を行うことで、制度利用者の生活環境を知ることができ、虐待や孤立死のおそれなど生活上のリスクを発見することもできます。家族にも会い面接することもでき、近所の様子も知ることができます。公的扶助ケースワークの中で最も重要なこの訪問活動を行う頻度が下がる、質が低下するということになってはなりません。

そこで次に、生活保護制度のケースワーク機能・支援の質の確保の問題について、市民文化局長に伺います。

今回の「検討における考え方について」の中で、経済的な困難に加え障がいもあるような、困難な状況が重複するケースへの対応を理由に「専門的・機動的な保健・福祉サービス提供体制の構築」の検討、つまりは大師・田島福祉事務所も含めて区役所に統合してしまうことまで検討するとしています。

しかし、従来は田島・大師福祉事務所のケースワーカーが自転車や徒歩で生活保護利用者の自宅を訪問することができていたのが、区役所から訪問するということになれば、今までのように訪問ができなくなるのは明らかです。 ケースワークにとって最も重要な訪問が減れば、その質は低下してしまうことになるのではないでしょうか。

支所 ディスプレイ 

事前の調査では、川崎福祉事務所の地区担当員・ケースワーカーは47人で4011世帯を担当し、大師では24人で2075世帯、田島では27人で2348世帯を担当しています。ケースワーカー1人当たりの生活保護利用世帯数は85~87世帯と、いずれも社会福祉法で示された都市部の標準数である「1人あたり80世帯」を超えています。

すでに法の示す「標準数」を超えているのに、さらに現在の田島・大師福祉事務所をなくしてしまえば、訪問をはじめケースワークの機能が十分に発揮できなくなるのは明らかではないでしょうか。なぜこのような機能再編を検討しているのか市民文化局長に伺います。市民文化局の言う「時期を捉え」て「専門的・機動的な保健・福祉サービスが提供できなくな」ってしまうのは、むしろ支所機能を区役所に統合した先にある未来なのではないでしょうか。保健・福祉サービスを専門的・機動的に発展させるのであれば、支所に専門職をさらに配置し、現在のケースワーク機能との連携をはかることなどを通じて、充実させるべきではないでしょうか。伺います。

市民文化局長の答弁

専門的・機動的な保健・福祉サービスの提供体制についての御質問でございますが、川崎区では生活保護受給者をはじめ、保健・福祉サービスを必要とする市民の数が市内で最も多いことに加え、これらの中には困難な状況が複数重なっていたり、川崎区役所と両支所の所管区域をまたがった事象が発生したりするケースもあるなど、より専門的かつ機動的な支援が必要な状況がございます。このような課題に的確に対応するため、どの所管区域にお住まいの方に対しても、時機を捉えた支援ができるような体制の構築や、 3管区に分散している業務の見直しなどについて、検討してまいります。

現在の段階から市民によく周知しともに練り上げる対応を

 これまで述べてきた、高齢者・障がい者の皆さんの問題、生活保護制度にかかわるケースワークの問題をはじめ、児童福祉制度を利用されている方についても、窓口が遠くなって行政サービスへのアクセスが低下するという問題があります。支所機能の再編の理由について「窓口がわかりにくいから」と言われますが、インターネットや配布物などで周知をすれば済む問題であり、中心的な問題ではありません。

 これまで述べてきたような重大な変更を検討する今回の「考え方」なのですから、市民に広く知らせて意見を聞き、市民とともに市が検討していくことが必要です。しかし、5月31日の文教委員会で報告したあと、6月以降は「町内会等関係団体へ説明」とされ、「地域説明会の開催」がされるのは「11月から12月」とされています。

 もともと「大師河原村」「田島町」という独立した地方自治体だった歴史を持つ支所への重大な変更なのですから、「基本方針」を固めてから市民に説明するのではなく、方針を練り上げる今の段階から、住民に丁寧に説明し意見を聞くべきですが、伺います。障がい者・高齢者のみなさんの利用実態や思い、生活保護利用者の皆さんへの支援の質が本当に低下しないのか、丁寧な調査も行うべきです。市民文化局長に伺います。

市民文化局長の答弁

市民への説明等についての御質問でございますが、「検討における考え方」については、現在、町内会等の関係団体への説明を実施しているところでございますが、これに加えて、ホームページや市政だよりでの広報等を行いながら、さらに市民への周知を図るとともに、11月に基本方針(案)を公表した後、広く市民の皆様に内容をお伝えし、御意見をいただくために、地域説明会やパブリックコメントを実施してまいりたいと考えております。

今後につきましては、高齢者や障害者を含めた支所管内にお住まいの皆様に、今まで以上に専門的・機動的な保健・福祉サービス等が提供できるよう検討してまいります。

意見 孤立しがちな高齢・障がいのある方を支えるケースワークの機能が決して低下しないように

「今まで以上に専門的・機動的に保健福祉サービスを提供します」と言われますが、困難な状況に置かれている市民の状況を最前線でつかむ、ケースワーク・訪問活動の回数や質が担保できるのか、明確な答弁はありませんでした。

この間私が相談を受けたHさんは、14平米に満たないワンルームのアパートの1室に、持病のある女性も含む50代の夫婦、難病を患われている20代のお子さんの3人で暮らされていました。こうした想像を絶するような状況で、訪問しなければその困難にかみ合った支援はできません。市民文化局長の答弁で、「困難な状況が複数重なるケースに対応する」ための方針だ、「時期を捉えた支援のために体制をつくるんだ」と言われましたが、ケースワーカーの訪問回数が減れば、孤独死孤立死なども含めた市民のリスクをつかむチャンスがそれだけ失われます。数年前に私の知人の70代の一人暮らしの女性がなくなりました。4日前まで元気だったのに、お風呂場でヒートショックで亡くなっていました。近所の方ご友人の方は「あの時近くに寄ったのになぜ声をかけなかったのか」と後悔されていました。高齢の方や、障害や成育歴も含め様々な背景を持つ方が生活保護制度の利用者の中にはおられます。こうした孤立しがちな方々の中には「訪ねてくるのはケースワーカーだけしかいない」という方も少なくありません。市民の命と尊厳を守る最後の砦である生活保護制度のケースワークの機能が決して低下することのないよう、慎重に検討するよう要望します。

事前のやり取りの中で、担当者の方から「体制がかわることで、訪問に割ける時間が増やるようにしたい」という思いも伺いました。しかし、現状でも都市部で求められる「ケースワーカー1人あたり80世帯」を超えている現状があるのに、田島・大師から離れる区役所に実際に移った場合に、訪問活動を強化できる体制となるのでしょうか。この点については懸念がぬぐえません。今後の検討内容やその結果がどうなるかは別にしても、法で示された「ケースワーカー1人あたり80世帯」という基準を満たすよう人員を増やすことを要望いたします。

この「考え方」の、住民の皆さんへの周知についてですが、「考え方」をしっかり広く市民に示しながら、市民から寄せられた意見については、率直に受け止めていくことが必要です。市民に対し十分に説明し市が意見を受け止めるよう要望いたします。質問を終わります。

片柳すすむ

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