片柳すすむ

かたやなぎ 進
日本共産党川崎市議会議員
活動レポート 議会活動報告

「オール川崎」の世論でヘイトスピーチ防止のガイドラインが実現

2018年1月16日

日本共産党が発行する雑誌「議会と自治体」1月号の「情報と交流の広場」に私の書いた文章が掲載されました。遅くなりましたが紹介させていただきます。

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川崎市は11月9日、「公の施設の利用許可に関するガイドライン」を文教委員会に報告しました(3月末の施行を予定)。その経過は以下のとおりです。

市長は2016年5月、繰り返しヘイトスピーチ集会を市内でくりかえし主催してきた人物(以後A氏)の公園使用申請に対し、川崎市都市公園条例の「都市公園の利用に支障を及ぼさないと認める場合(に限り、使用許可を与えることができる)」という規定をもとに「使用不許可処分」の決定を下しました(本誌16年7月号「小特集ヘイトスピーチを許さない 市民と共同の力でヘイト・デモを中止させた(川崎市)」参照)。

ガイドラインはこの決定をふまえて、今後、公の施設でヘイトスピーチがおこなわれることを制度的に防止するために、各施設の設置・管理条例をもとに利用制限の判断をする際の基準として策定されたものです。

●「ヘイトスピーチ許さない」オール川崎の世論が力に

この市長の決定の背景には、「オール川崎」での「ヘイトスピーチを許すな」との世論の大きな盛り上がりがありました。

16年1月「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が結成され、共産党、民進みらい、公明党の各市議団が参加し、元自民党参院議員が会長をつとめる団体も加わりました。はたの君枝衆院議員をはじめ各党の国会議員・県議・市議らも参加した学習会や集会・街頭でのアピール行動などを積み重ねました。

その結果、川崎市議会は同年5月末に全員一致で「公園使用不許可」を市長に要望することとなり、代表した議長の申し入れを受けて、市長の判断となりました。

全市議が一致したのは、在日コリアンをはじめ外国人が多く住むという川崎市の歴史的な背景をもとに、「ヘイトスピーチは許してはならない」「ヘイトスピーチはまともな「言論」には値しない」という共通認識があったからではないかと思います。

ヘイトスピーチの標的とされてきた社会福祉法人が、ヘイトスピーチデモをおこなわないよう、裁判所に仮処分を求めて申し立てをしていました。市長による公園使用不許可の直後の6月2日、横浜地裁川崎支部はこの申し立てを受けてヘイトデモを主催するA氏に対し、ヘイトスピーチ解消法が定義する差別的言動は憲法13条に由来する人格権を侵害するものであり、街宣車やスピーカーなどで行われることを考慮すれば、違法性は顕著であるといえ、「もはや憲法の定める集会や表現の自由の保障の範囲外であることはあきらか」である、として社会福祉法人の周囲500m以内への立ち入りを禁止する仮処分を決定しました。

日本共産党市議団はガイドライン案を審議した文教委員会で、「ヘイトスピーチは言論の自由として保障する範囲外なのだから、ヘイトスピーチ解消法の定義などから、明らかにヘイトスピーチがおこなわれると判断できる場合については、『集会は表現の自由の保障の範囲外』として、ストレートに使用不許可の判断をすべきだ」と主張してきました。

●ガイドラインの問題点①「迷惑要件」は不要

こうしてできたガイドラインですが、いくつかの問題点もありました。私たちが市議会で指摘した中心点は、①ヘイトスピーチ解消法の定義などにてらしてヘイトスピーチが行われるのが明らかな場合でも、「他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険のあることが明白な場合」でなければ規制がされないため、実質的にはヘイトスピーチを抑止できないのではないか、②差別的言動の可能性を判断するため施設利用申請者の情報発信を確認するとしているが市民団体や個人への不要な情報収集にならないか、という2点でした。

市は、「不当な差別的言動の行われるおそれが客観的な事実に照らして具体的に認められる場合」(=言動要件)かつ、「他の利用者に著しい迷惑をかけることが客観的な事実に照らして明白な場合(他の利用者の生命、身体、自由、名誉もしくは財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険があり、これを回避する必要性が優越する場合)」(=迷惑要件)と判断されるときに限って、施設利用の「不許可」及び「許可の取消し」ができるとしています。

しかし、ヘイトスピーチ解消法で定義されている「言動要件」に当てはまるのであれば、法律違反として対応するのは当然のことで、わざわざ「迷惑要件」を設定する必要はありません。また、差別的言動をおこなう人たちは、その言動をインターネットなどで広く拡散することを目的にしています。たとえば市民会館の会議室を使用してヘイトスピーチがおこなわれる場合、会館の他の利用者はヘイトスピーチを見聞きするわけではないのですから、市の言う「迷惑要件」は成立しません。その一方で、インターネット上には広くヘイトスピーチが流布されることになります。実際には「会館利用者に迷惑をかける」どころではなく、広範な人々の尊厳を傷つける事態となることは明らかです。

こうしたことから、差別的な言動が明らかにおこなわれるという「言動要件」だけあれば十分であり、迷惑要件は不要だと主張しました。

市の答弁は、最高裁の判例をふまえて「迷惑要件」を設定したのであり、今後の判例の動向などをふまえてその判断は変わりうるというものでした。

●ガイドラインの問題点② 不要な情報収集はやめよ

フローチャート

ガイドラインに示されたフローチャート(申請書によるケース)(図)を見ると、①【『言動要件』に該当するおそれ】が「ある」と判断された場合は、②【利用申請書等の記載を確認する】とされています。申請書を確認する前の段階で「ヘイトスピーチを行うことはあり得ない」と断定することは容易ではなく、それなりの数が「おそれあり」と判断されることが予想されます。

次に②の【申請書の記載を確認する】段階ですが、申請書に「差別的な言動を行います」とわざわざ書く人がいるとは考えられませんから、事実上すべてのケースが、③の【申請者側の情報発信を、ウェブページ・チラシ・聞き取りなどで確認する】という段階に進むことになります。ここで確認した情報は、市の担当部署に蓄積され、その後の判断基準とされるということが、これまでの委員会審議で明らかになっています。

つまり、施設の利用を申請した多くのケースについて、市が情報発信を確認し、その情報が市に蓄積されるということが危惧されました。

この点について「不必要に市民の情報を集めることになるのではないか」とただしたところ、市は「ウェブページやチラシなどの広く公開されている情報を確認することにとどめる」「思想調査のようなことはしない」と答弁しました。こうした答弁を足がかりに、恣意的な対応がされないように引き続き注意していく必要があります。

●ガイドラインの意義

このガイドラインは、ヘイトスピーチ解消法や人種差別撤廃条約などの地方自治体への要請に積極的にこたえたものです。また、表現の自由など日本国憲法の保障する自由と権利を不当に侵害させないことと、不当な差別的言動を許さないことの双方に配慮して具体的な基準をつくることをめざした、全国で初めての重要な取り組みです。

本来ならばガイドラインが適用されるような事態のないことが一番望ましいのですが、すでにガイドラインに挑戦するかのように、ヘイトスピーチを行ってきた人物による講演会がおこなわれています。ひきつづき「オール川崎」の世論を広げながら、市民の世論の力で実現したガイドラインも生かして、ヘイトスピーチをさせないようにしていきたいと思います。


▼ヘイトスピーチ解消法第2条の「定義」

①対象が「本邦の域外にある国若しくは地域の出身者である者又はその子孫であって適法に居住するもの」であること
②「差別的意識を助長し又は誘発する目的」を有すること
③「本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として」いること
④「本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する」ものであること
の4つの要件を満たすものを「不当な差別的言動」とする

▼法務省委託調査の「3つの類型」(法務省委託調査研究事業として公益財団法人人権教育啓発推進センターが行ったヘイトスピーチに関する実態調査報告書=20163月)

a、特定の民族や国籍に属する集団を一律に排斥するもの(例:「○○人は日本から出て行け」)
b、特定の民族や国籍に属する集団の生命、身体等に危害を加えるもの(例:「○○人を皆殺しにしろ」)
c、特定の民族や国籍に属する集団を蔑称で呼ぶなどして、ことさらに誹謗中傷するもの(例:ゴキブリ○○人)

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